まるちょうはノラ・ジョーンズが好きでよく聴く。彼女の二枚目のアルバム「Feels Like Home」の中に「Humble Me」といううたがある。とても穏やかな曲調で、癒される作品なのだが、歌詞についてはほとんどノータッチだった。すごく安易なんだけど「Humble」をいわゆる野球選手が守備でボールを「ファンブル」する、あれだとずっと思い込んでたのね。小悪魔な彼女に手を焼いているけど、好きでたまらない・・「私をファンブルしてよ、手を焼きながら愛してよ」という内容と、勝手に思い込んでいた。全くお恥ずかしい話である。
ある日、満員電車内でDUO3.0で英単語を勉強していた。そこで例の「humble」が出てきたのね。そこには例文として「From a humble background, John achieved worldwide fame.」という文が挙げられていた。訳としては「庶民の身から、ジョンは世界的な名声を勝ち取った」ということになる。ここですごい違和感が生じたのね。あれ?ファンブルって、俺の思っているファンブルじゃないの?みたいな。意味としては「庶民の、謙虚な、自分のことを高く見ない」と記してある。
電車内で、次項に移ろうと思ったが、上記の「違和感」がそれを押しとどめた。これと同じ単語を、どこかで見かけたことがある? いや確かにそうだ☞ノラ・ジョーンズだ! そうしていつも何気なく聴いていた「Humble Me」という楽曲の奥深さを思い知るに至る。
まるちょうが思っていた「ファンブル」は「fumble」なのね。これだから英語は怖い。とんでもない勘違いをずっとしていた。ノラ・ジョーンズさま、ごめんなさい。彼女が想いを込めて歌っているコンセプトを、ずっと台無しにしていました。それにしても・・「humble」という単語は、とても奥深い意味がある。本作で使われている動詞としての意味は「謙虚にさせる、卑下する、(意志などを)くじく、失意させる」など。自分としては「なんだなんだ?」的な展開で、加速度的に「humble」という単語に対する興味が出てきたわけ。その流れでこの「Humble Me」の歌詞を和訳しようと思い立ったのだ。
ここで、とてもよい映像を見つけたのでご覧ください。ライブでのノラを観ることができる。いやいや、可愛いね~ ノラのどこが可愛いかって、その利発そうなおでこよ。ギターで伴奏している男性との掛け合いも素晴らしい。
歌詞を一生懸命訳したので、記しておきます。全部書くと長過ぎるので、前半部分だけ。
Humble Me/Norah Jones
Went out on a limb
Gone too far
I broke down at the side of the road
Stranded at the outskirts and sun’s creepin’ up
Baby’s in the backseat
Still fast asleep
Dreamin’ of better days
I don’t want to call you but you’re all I have to turn to
What do you say
when it’s all gone away ?
baby I didn’t mean to hurt you
truth spoke in whispers will tear you apart
no matter how hard you resist it
it never rains when you want it to
You humble me Lord
You humble me Lord
I’m on my knees empty
You humble me Lord
You humble me Lord
Please, please, please forgive me
のっぴきならないはめになった
あんたはずっと遠くにいっちゃった
やりすぎちゃった
あたしは道の脇に泣き伏して
街の外れで途方に暮れる そして太陽はのろのろ昇る
子供は後部座席にいる
まだぐっすり眠っている
よかった日々を夢みながら
あんたになんか電話したくない
でも振り向くべきなのは、絶対私の方
でも頼るべき人はあなたしかいない
あんたはなんて言うかしら
全て終わったとしたら?
あんた、傷つけるつもりはなかったんだよ
うわさ話を聞いて、あんたは打ちのめされる
あんたが歯を食いしばって耐えたとしても
思うようにいかないのが運命
神様、私がばかでした
なんてばかなんだろう
むなしくひざまずいて
神様、私がばかでした
なんてばかなんだろう
お願い、お願いだから私を許して
要するに、幼子のいる夫婦が喧嘩して、夫が出て行ったという情景である。「あたし」は喧嘩したけど、悪いのは自分だと悟っている。「humble」という単語は、基本的に「へりくだる姿勢」を示す言葉である。だからこそ「Humble me」なのね。Lordは「主よ」とか「神様」という呼びかけの意。「You humble me」の「You」は、もちろん神様のこと。そうしたことを考慮して、上記のような訳になりました。めっちゃ意訳だけど(笑)。でも、ホントに「humble」という単語は、訳者泣かせの言葉なんです。
本作はしたがって、夫婦の絆のもろさ、喧嘩の後の虚脱感、自己嫌悪、後味の悪さ、そんな感情が描かれていると思う。曲調はすごくノラらしい穏やかな感じなんだけど、うたの核心は「やってしまったことへの後悔の念」なんだね。幼子とふたり、心細く、神様に許しを乞う。そこにはもちろん「必死な女の願い」があるわけで、曲調との乖離があると思う。でも、この乖離はノラでこそ可能な料理法なのであって、リアルでは厳しい状況を、あくまでも「ほんわかと穏やかに」歌い上げる。そこが彼女の凄いところだと思う。そして、そのへんにこの楽曲の奥深さを発見できるように思ったのでした。以上「Humble Me」という楽曲について語ってみました。
※注(2012/11/11) コメントにあるように「turn to」は「頼る」の意であり、上記のように訂正します。 >看護学生のまりさん、多謝m(_ _)m
また「Gone too far」も「やりすぎた」「度を過ぎた」という意味のイディオムであり、すでに訂正済みです。よろしくお願いします。
訳間違ってます
>間違っているさん(笑)へ
ご指摘ありがとうございます。
翻訳に厳しい、そんなあなたにご紹介します。
ノラを大阪女にしたら?
https://marulog.site/archives/50945033.html
こちらも、ぜひご覧ください~(^^)
こんばんは(^_^)
初めまして。
看護学生をしている、まりと申します。
私は、数年前からノラジョーンズが大好きで、先週は、愛知県までノラジョーンズのライブを大阪から見に行きました。
ノラの声、作り出す雰囲気、全てが魅力的で、私の感性を刺激してくれます。
そんな私が、最近好きな曲が、humble meです。そして、歌詞を自分で翻訳して、より曲を深く味わってみたいと辞書を片手に翻訳に挑戦していました。
しかし!
なかなか難しくて行き詰まってしまいました。そして、誰かネットで翻訳していないかな…と思っていた矢先のこちらのページでした。
とても分かり易く、また歌の全体像を掴みやすい解説を付けて下さって、なるほど!と思いました。
特に、1番の歌詞の
I dont want to call you but youre all I have to turn to
の部分が、どう訳すべきか分からず、
この一文の意味が分からず
苦戦してしまいました。
夫婦の、喧嘩の歌だったんですね。
夫婦というか、男女の意見の食い違いと
自分の後悔の歌。
改めて、この歌を聴くときにこれまでと違った視点を持つことが出来ると思いました。(^_^)
ありがとうございました、とても勉強になりました!
今、ふとDVDを手にしてみたところ、
日本語の対訳がありました。
歌詞の翻訳は、難しいですね。
とても、奥深い、後悔の歌なんですね。それにしても、引き込まれる曲です☆
もう引き返せない
ずいぶん遠くまで来たから
道路脇で故障して
町外れに取り残されて
夜明けが忍び寄る
愛しい我が子はバックシートで
まだぐっすり眠っている
すてきな日々を夢見て
あなたに電話したいけど、頼るべき人はあなたしか居ない(turn to:頼るだったんですね。涙)
あなたは何て言うかしら?
すべてが過ぎ去ったその時
あなたを傷つけるつもりはなかったの
小声で囁かれる真実は 人の心をかき乱す
どんなに抵抗しても
望んだときに 雨は降らない
ー*ー*ー*ー
私に歌詞の意味を導いてくださる機会を下さって、ありがとうございます。改めてお礼の意味を込めて…
>まりさんへ
ノラ・ジョーンズいいですよね~
僕も先日、大阪へコンサート行ってきました。
それについては、またBlog書こうと思っています。
さて、上記の貴重なご指摘、ありがとうございます。
「turn to:頼る」は気づいていたんですが、
訳がなんかしっくりこないなと思い「振り向く」にしていました。
でも、対訳のように文を構成するとぴったりしっくりですね。
なるほど・・ 翻訳は難しい、でも面白い。
まりさんのご提案の訳、いただいていいですか?
「PS」として、記載させていただきます。
えっと、それとですね。。
DVD対訳の
「もう引き返せない
ずいぶん遠くまで来たから
道路脇で故障して」
これはどうかなと思いますよ。
out on a limb=のっぴきならな羽目に 危険な状態に
go too far=(礼儀、常識などの点で)度を過ごす
break down=(感情などを)押さえ切れなくなる、わっと泣きふす
冒頭の訳については、僕の方が正しいです。断言します。
「I broke down」ですから、車が故障するのではありません。
情景としては「あたし」が彼を交友関係?などの件で
やり込めすぎちゃったのね。「あなたどうなのよ!」みたいな。
それが「(I have) gone too far」です。その結果
「(I) went on a limb」となり、不安感いっぱいになって、
道ばたで泣き伏しちゃったというわけです。
いわば「あたし」の心象風景を描いています。
「車で遠くまで来てしまって、引き返せない」
という解釈には、断固反対です。
とりあえず「turn to」の件については、ありがとうございます。
翻訳、また機会があれば取り組みたいです。ホント面白いよね。
「まるろぐ」をこれからも、よろしくお願いします。(^o^)
こんにちは。
オーストラリア育ちのソラと申します。
僕もノラ・ジョーンズが好きで、Humble meのタイトルに惹かれて2ndアルバムを買いました。
私を謙遜にならせて、とはどういう歌なのかな~とゆったりとした曲調からくる意義深い歌詞が好きです。
動画でわかりましたが、ノラ・ジョーンズと一緒にバンドを組んでいた友人がこの曲を作ったんですね。
コメント欄の断言パート(笑)をみて思ったのですが、英語というのは比喩的と直接的な意味をかけることがあります。それが英語の美しさなんです。
まるちょうさんが仰っているニュアンスも正しいです。またまりさんの引用した歌詞も正しいと思います。車と自分をかけあわせて表現しているからこそ、この歌詞は深いと思います。
例えば車がbreak downと自分がbreak down一緒にかけてるんですね。よくイライラして運転してる時に車が動かなくなって「もう!!」みたいな感情になって泣いたりするシーン見たことありませんか?ちょうどあんなニュアンスを醸し出しているんじゃないでしょうか。
ちなみにHumble meは聖書の詩編というとこのダビデのHumble me Lordから来ている気がしました。
訳するのが難しいのは英語圏の文化、宗教、人ならではのフレーズかもしれません。
長文失礼しました~
>ソラさんへ
Blog読んでいただき、ありがとうございます。
ノラのファン、多いですね~ いや、すごい。
彼女の影響力の大きさって、計り知れないな。
さて、コメント欄の「断言パート(笑)」について。
確かにおっしゃる通りかもしれません。
ダブル・ミーニングというか。
その方が、歌詞が表す世界観も広く、深くなりますもんね。
ただひとつ言わせていただくならば・・
Blogに載っけている訳は、全くの僕のオリジナルです。
多忙な中の限られた時間で、それなりに必死に訳しました。
まりさんの提示したDVD対訳?に対して、ちょっと過敏に
反応したのは、そのへんの「矜持」ととっていただけると
嬉しいです。それだけ、一生懸命に訳したのです。
ただ・・ 歌詞というのは基本、ポエムです。
そういう意味では、ソラさんのおっしゃる通りです。
言葉を一義的に決めてしまっては、面白くない。
論理じゃなく、感性なのね。
僕自身は、ポエムは苦手です。とても散文的な人間なのです。
「Humble me Lord」の由来についても、ご指摘ありがとうございます。
そうなんです。聖書からのもじり?かなと考えていました。ぼんやりと。
またちょっと時間のある時に「詩編、ダビデ」について調べてみます。
でも、どうですかね? 文化、宗教という意味では、
英語圏の方が、自我が明確な気もしますが。
ダブル・ミーニングというのは、ノラの音楽性に
とても合っているんだと思います。ほんわかした感じね。
とても貴重なコメント、ありがとうございました。
今後とも、拙Blogをよろしくお願いします(^^)
ソラさんと同じ意見かなーと思います。この訳は気持ちに偏りすぎて情景が潰れちゃってるかなと思います。
ノラの歌のいいところは、聞いていて情景と共に感情も乗っているところなので、情景が潰さなくてもいいのに。。というところがとても残念。
ぼくは、Humble me Lordのところすごい好きです。バカな私、ではなくて、相手の優しさとかに気づかなくて、すごくおごり高ぶっていたことが相手がいなくなって初めて気づいて、こんな私を謙虚にへりくだらせてくださいって、変えてくださいっていう心からでたお祈り、願いだと思います。日本人の宗教観とも違うので、その点もぼくは違和感がすごくあって。
なんとなく、全体的に、ノラが日本人になってしまっているところが、少し残念。
やっぱり、はじめのところも、あまり裕福じゃない夫婦で、米国には車検もないし日本車より壊れやすいので、車も調子がよくなくて路肩に停めて、自分もこの状況にスタックして心が壊れそうで状況全てに戸惑っている姿が浮かびます。言語、文化、宗教、社会の背景もあるし、短い歌詞にギュっと詰まっていて、情景・心情が短い歌詞でビビッドに伝わってくるところがすごいと思う。書いているうちに、訳すと全部、なんというか、グシャってそのいいところが潰れちゃうので、そのまま聞くのがぼくは好きだな。そうだ、いっそ訳すのやめよう笑
> manabuさん
投稿、ありがとうございます。
ソラさんのご意見は、かなり核心を突いています。
僕も反省したいとおもいます。。
ただ~、翻訳という作業は、元の文章の世界観を
限定する作業なわけで。。
僕は日本人で内向的な人間です。
だから訳が「日本人的」で「気持ち優先」になったとしても、
それは仕方ないのかな、と思うのです。
manabuさんが「いっそ訳すのをやめよう」と仰っていますが、
それで全てOKなら、話は早いわけです。
原文で理解できるなら、それがベストですから。
僕が翻訳したのは、あくまでも「個人的な趣味」です。
細川たかし的な「私ばかよね~ おばかさんよね~」みたいな世界観。
この切り口で、ノラの世界観を切り取ったわけです。
これは「訳者の自由」ですよね? 違いますか?
アートをどう感じるかは、受け手の自由です。
「これはこうあるべき」という態度は、どうかと思います。
西欧のものだから、西欧的に訳すべし ☞ そうではない。
ソラさんの「ダブルミーニング説」は認めますが、
「西欧だから、西欧的に」というのは異論がありますね。
了見が狭いと思います。
すみません、キツくて。疲れているのかもしれませんm(_ _)m