「くよくよするなよ/ボブ・ディラン」を訳してみた

今回は趣向を変えて、歌詞の翻訳をやってみたい。ボブ・ディランの「Don’t Think Twice, It’s All Right」という歌が、以前から気になっていた。要するに「考えすぎるな、大丈夫だよ」ということね。私という人間は、病気の状態が悪くなると、どうしても「考えすぎて」しまう。いろんな幻影や関係妄想を抱く。そしてじわじわと訪れる後悔や自責、妙な後味の悪さ・・ だから、このタイトルに霊感を感じてしまったのね。いつかちゃんと向き合って、自分で訳してみたいと思っていた。このうたは、ディランが20歳すぎに書いたものらしい。すげ~ 本作はぜひ最後まで訳したいので、とても長くなりますが、いちおうアップしちゃいます。ま、自己満足ですけどね。どうかお許しください。

Don’t Think Twice, It’s All Right/Bob Dylan



It ain’t no use to sit and wonder why, babe

It don’t matter, anyhow

An’ it ain’t no use to sit and wonder why, babe

If you don’t know by now

When your rooster crows at the break of dawn

Look out your window and I’ll be gone

You’re the reason I’m trav’lin’ on

Don’t think twice, it’s all right

「なんでだろう?」と考え込んでも仕方ないよ

そんなの意味ないよ、とにかくね

そう、じっと考え込んでも、何の意味もないんだ

たとえ今は分からないとしても

夜が明けて目が覚めたら

窓の外を見てごらん もう僕はいないだろう

僕は旅を続けるよ 全部きみのせいさ

考えすぎなくていい、大丈夫

It ain’t no use in turnin’ on your light, babe

That light I never knowed

An’ it ain’t no use in turnin’ on your light, babe

I’m on the dark side of the road

Still I wish there was somethin’ you would do or say

To try and make me change my mind and stay

We never did too much talkin’ anyway

So don’t think twice, it’s all right

きみの「灯り」をつけても無駄だよ

そんな「灯り」なんてつけたこともなかったのに

そう、灯りをつけてもダメなんだ

僕は道の向こうの暗がりにいる

まだ僕はきみに未練があるのかもね

きみが僕を説得して引き止めてくれたら・・

結局、僕たちはすれ違いばかり

ああ気にしたら負けだ、いいのさ

It ain’t no use in callin’ out my name, gal

Like you never did before

It ain’t no use in callin’ out my name, gal

I can’t hear you any more

I’m a-thinkin’ and a-wond’rin’ all the way down the road

I once loved a woman, a child I’m told

I give her my heart but she wanted my soul

But don’t think twice, it’s all right

僕の名前を呼んでも無駄だって

前はそんな風に呼ばなかったくせに

僕の名前を呼んでも無駄だよ

きみの声なんか、もう聞こえない

僕は道を歩きながら、ずっと考え彷徨う

かつてある女を愛していた ま、子供みたいな女だよ

僕は彼女に心を捧げたが、彼女は僕の魂まで欲しがった

でもいいよ、そんなのいいんだ

I’m walkin’ down that long, lonesome road, babe

Where I’m bound, I can’t tell

But goodbye’s too good a word, babe

So I’ll just say fare thee well

I ain’t sayin’ you treated me unkind

You could have done better but I don’t mind

You just kinda wasted my precious time

But don’t think twice, it’s all right

僕は歩いていくよ 長くて孤独な道のりを

行き先なんて、わからない

でも「さよなら」って言葉はベタだよな

だから「元気でやっちくれ」とだけ、言っておくよ

きみが優しくなかったとは言わない

もっと優しくはできただろうけど、もういいんだ

貴重な時間をむだにしてしまったかな

でもいいんだ、くよくよせずいこう

訳してみて分かったけど、本作は神経症の歌なんかじゃなく、ちゃんと恋愛について歌っている。そりゃそうだ、20歳過ぎの青年だもの。男女の別れ際に「いろいろあったけど、くよくよせず前に進もう」という意味だ。一番のキモとなる文を挙げておく。

I give her my heart but she wanted my soul

僕は彼女に心を捧げたが、彼女は僕の魂まで欲しがった

これは「成熟していない女の無分別」を表現している。「私だけを見てよ!」ってやつね。たぶんその「女」は、ディランに「私と音楽のどちらを取るの?」みたいな質問をしたに違いない。男としては「やれやれ」だよね。

結局のところ「Don’t think twice, it’s all right」という言葉は、主に「自分に言い聞かせる」ための言葉だ。誰かに説教たれているわけじゃない。切なさを抱えながらも、自分の女々しさにケリをつけて、なんとか前に進もうとする青年の姿。まるちょうは状態悪くなると、二回どころか五回くらいは同じことを考えるかな。本作は「いいんだ、大丈夫」と励ましてくれる。青年ディランに励まされる、オッサンまるちょう。潔く生きたいもんですね、難しいけど・・f(^^;)