最近「失敗したなー」と反省する症例をふたつ(まるちょう診療録より)

ひとつめ。80代の男性で、ヘルパーさんと来院。主訴は一週前からの痰と発熱。熱は37℃〜38℃。胸部聴診で全肺野に湿性ラ音あり。ん? 喘息とか心不全? とりあえず、胸部レ線と心電図、採血しましょうか。

検査結果。心電図は問題なし。心臓は大丈夫。採血で好中球増多あり、CPR10台と上昇。胸部レ線で右下肺野に浸潤影あり。昨年末に誤嚥性肺炎で入院されている。今回は、その再発と思われた。・・と診断までは、すんなりいける。臨床はここからが大変なんです。入院先を見つけるという、困難な作業が待っている・・

まずC病院をあたる。診療情報提供書を作成するが、その途中で「先生、C病院満床です」とNsの言葉。仕方ない、M病院やK病院をあたるか。。 そうして、私は次の患者さんを診察する。この80代のおじいさんで停止しては、外来は成り立たない。

12時半ごろ。他の患者さんは全て診察終了。肺炎のおじいさんをしっかり対応する。結局、M病院とK病院も満床。うーん、、となるが、肺炎そのものは「待てる」と判断した。C病院に予約入院として、本日はいったん帰宅とする。ただし、帰宅前に一本、CTRX1gの点滴と喀痰の吸引をしておく。帰宅後は、訪問看護に喀痰吸引を一日三回依頼する。まあ、明日中にはC病院のベッドが空くだろうという読みである。

しかし、この読みは甘かった。その日の16時に訪問看護Nsが自宅を訪問。バイタルはBP80/50、p100、KT 37.8。T診療所へ問い合わせの電話あり「どうしたらいいでしょうか?」と。これは一目、ショック状態である。いろんな要素があると思うけど、とりあえずショックである。すぐに現場の判断でQQ搬送(搬送先はQQ隊員おまかせ)となる。結局、北区のK病院に入院となった。

お粗末な判断だった。コロナ禍の情勢では、こうした超高齢の肺炎患者は、すぐに搬送(搬送先はおまかせ)という選択肢はあるのかな、と反省した次第です。

ふたつめ。60代男性。健診の胃透視で「胃体部大弯巨大すう壁症」にて胃カメラを受けなさいと。こういう所見は胃の悪性リンパ腫とか、非上皮性の悪性所見を念頭に付いてくる。もちろん、たいてい胃カメラで問題なし、と確認されることが圧倒的に多い。しかし、である、、

この方は「胃体上部小弯側に深掘れの潰瘍性病変(2型腫瘍除外)」を指摘された。写真で見ると、周堤形成が明確にあるようで、これは胃癌の可能性がありそう。もちろん生検は実施されたのだが、残念なことに悪性所見は認めず。肉眼で悪性っぽくて、生検で悪性が出ないという場合、これはどうしても胃カメラ再検となる。本人様としては、苦しい胃カメラをまた受けなあかんのか!とご立腹される。そこを丁寧な説明で納得していただく、これが臨床である。

さて、結果説明の日。僕はかなりごねられることを覚悟していた。「胃癌の可能性はあります。やはりちゃんと癌の証拠を取らなければならないので・・」 本人様の表情は、それほど硬いとは思わなかった。「今度はベテランの先生が胃カメラされると思いますし、病変の位置もわかってますので・・」 わりとあっさりと了解いただいた。ほっと一息。

しかし、である。胃カメラ当日。担当のNsに対して「今日の検査の料金は発生しないですよね?」「二週間という短い期間で二回も検査を受ける患者の負担を病院はどう考えているのか。今日検査して、また払わすのか」「検査料金が発生するかは病院側が考えることだ」「何回検査を受けさせるのか。患者の負担をどう考えているのか」叱責つづく。結局、胃カメラ再検はされずに帰宅された。

上記のいきさつをみて、私は青くなった。話せば、わかる。とりあえず、それから患者様の携帯に何度も電話を入れる。10回以上はしただろうか。でも、ぜんぜん繋がらない。留守番電話も停止になっている。二度、コールバックがあったんだけど、うまく出られず。なんか自分がストーカーのように感じてしまった。胃カメラの正式な結果説明の予約日。やはりその方は現れなかった。

他院で精査、治療を受けておられるなら、それで全然OK。当院が嫌なら、正式な紹介状も書くつもりだった。「話せば、わかる」というのは、甘かったようだ。話せなかった。どういう背景を持った方なんだろう? どうも夜勤をされているようなニュアンスもあった。あの周堤形成のある潰瘍病変は、胃癌だとしても早く切除すれば完治できるはず。 モヤモヤ〜 あの部位は生検するのは結構むずかしい。その辺の技術的なことを、ちゃんと説明すべきだったか。モヤモヤ〜 後悔先に立たず、ですか。
以上、最近の「失敗したなー」と反省する症例をふたつ書きました。