さる2月11日は、義母の一周忌だった。お義母さんは法事は要らないと言い遺された。でも、一周忌である。やはり実家に親族が集まって、お義母さんの思い出を語り合うひとときがあるべきです。そんな大事な日に、僕という人は「一周忌」をうっかり忘れていた。
その日はOff。いつも通り朝の散歩をしてセブンで昼飯を買ってくる。午前中は自炊(裁断)でもしようか。クローゼットから裁断機をずりずりと引きずり出してきて、書類を整える。そうや、ほぼ日でもらった百人一首があったな。これ全然いらんけど、捨てるには惜しいやつ。ちょっとお蝶夫人♪に見せてこか。リビングにいる嫁に、このどうでもいい案件を伝えようとした。彼女はちょっと想いに耽るような感じで、佇んでいた。友人のMさんから義母に花が贈られてきている。実家に届けたいけど・・ みたいな。
彼女が実家にいくということ。それは大きなエネルギーを消費するし、帰る頃にはどっと疲れる。僕はそうしたことを「分かったつもり」になっていた。何の気なしに「そんなん、別の日にしたらええやん。今日は休んだら?」と言ってしまった。「今日はお母さんの一周忌よ!」と彼女。僕は「アッ」となった。うっかり八兵衛もここまでくると笑えない。僕は凝固して、テーブルに佇んだまま動けなくなった。それを横目に、彼女はバタバタと荷造りして、出て行った。玄関のカチャンという音。私は取り残された。罪悪感と自己嫌悪が、僕を取り巻いていた。
僕は凝固して、その姿勢で40分くらい佇んでいた。深い自己嫌悪から、ちょうど一年前のバタバタした一日を振り返っていた。あの時、一晩、お義母さんは闘われた。そして翌朝、旅立たれた。今日はあれから一年後なんだ・・
ごく軽いうつ状態だったように思う。でも次第に「今、どうすべきか?」という意欲が湧いてきた。もちろん自炊なんかしてる場合じゃない。お蝶夫人♪は車で行っちゃったから、僕はJRで南草津の実家へ向かうか。最初、ちょっとためらいもあったけど、少しずつ確信に変わってきた。「よし、行こう!」 だってそれが一番正しい方法だから。
数珠をカバンに入れて、JRに飛び乗る。南草津駅から歩いて15分くらいか。どうも不在のようだ。出直すか。近くのサイゼリアで昼飯。セブンのおにぎりはボツ。そしてまた実家へ。まだ不在みたい。仕方ないので、車庫においてある椅子に座って、ボーッと過ごす。20分くらいそうしていたか? 家の窓に光が灯ったりするのを何度か見た。「これ、人いるんちゃうの?」
思い切って玄関のドアをノックしてみた。するとお義父さんが現れた。義弟のDくん家族も一緒だ。ちょっと拍子抜けしたが、仲間にいれていただく。お蝶夫人♪はすでに帰っていた。
取り急ぎ「お義母さんの一周忌を忘れていた」顛末について、お詫びした。ちょっとビックリされたが、許していただけた。その後はお義父さんとDくんと三人で、いろいろ語り合った。話の節々に、お義母さんが登場した。最後にお義父さん自慢のオーディオ部屋で「第九」を聴かせていただき、ちょっと涙した。
コケてしまったけど、なんとか挽回できたかな? 一年が経つというのは早いな~、と遠くを見ながら思った冬の日でした。合掌。