さる11月24日(日)に上原ひろみのピアノを聴きに大阪に行ってきました。僕は上原ひろみがそれほど好きなわけではない。彼女のアルバムは数枚持っているけど、好きなタイプの音楽じゃない。彼女のピアノ(キーボード)は、それは才能にあふれた演奏だと思うけど、、 でも、聴き疲れするのよね。彼女の音楽は「攻め」だと思う。僕は音楽に「癒やし」を求めている。そりゃ、食い違うよな。
じゃ、なんで彼女のコンサートに行ったって? 今年の春頃に「チケットぴあ」から大阪のコンサートの先行抽選のメールが来た。上原ひろみかぁ~、あんまし好きじゃないけど、前の方で観れるのなら、応募してみようかな? と、ノリで応募しちゃった。そしたら「当選しました」メールが来たのね。好みじゃないけど、前の方で観れるのなら、ちょっと楽しみかも? ちょっとウキウキ。
で、10月にようやく発券したところ、なななんと二階席ではあーりませんか。先行抽選の意味って? あとで分かったんだけど、結局のところ、彼女の人気がすごいことになってるんやね。当日、立ち見席(4000円くらい)が販売されていた。ええ?立ち見って?( ̄▽ ̄;)
俺ってなんでも「にわか」なんだよな。サッカーでもにわか、ラグビーもにわか、中村哲先生もにわか。ファンになるという十字架を背負えない男。あるいは情報不足で時代に付いていけない。上原ひろみという音楽家が、今どの位置にいるのか? ここはひとつ謙虚になって、最新のアルバムを聴きこもうと決心した。「Spectrum」という、ピアノソロアルバムである。短い紹介映像があるので、載っけておきます。
このアルバムを聴き始めたのが、自治会の運動会終わってからかな。それまでは聴くどころじゃないし。上原さんのコアなファンからすると、すごく不真面目な態度でアルバムを聴いていた。やっぱ、激しすぎるんだよなー 「Blackbird」のカヴァーだって、なにか中途半端な印象を持った。ジャコパスの偉大なカヴァーがあるので、なんかねー 本作のいちばんの目玉は「ラプソディ・イン・ヴァリアス・シェイズ・オブ・ブルー」という大作である。アルバム版で22分の長さ。これはちょっとした長さです。言うまでもなく、ジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」をベースに彼女の即興が炸裂する。コンサートでは、これが一番の見物なんだろうな、と思っていた。
さて、当日。実は前日の昼頃まで、会場がどこか調べていなかった。妻に「アホかあんたは」という目でみられ、それはごもっともですと同意した。大阪の福島駅から歩いて5分くらい。ザ・シンフォニーホールというところ。なんでもクラシック専用らしい。上原さんはギリOKなのかな。さて、上原さんの登場。本人さんをリアルに拝見すると、やはり「少女」の印象がただよう。これはいい意味で。40歳にはとても見えない。少しも歪んだところのない「無垢」を感じ取る。
彼女の演奏を「見て」いちばん感じたこと。キース・ジャレットを意識している? 立って鍵盤をたたく、足を踏みならす、頭を上下に振る、軽く叫ぶ。キースはありあまるエネルギーを、叫んだり、立ったりという「余分な」動きとして発散していた。それはその方が、演奏を解放できるから。もしかしたらその虎の巻を、上原さんも意識していたのかもしれない。だって、キースはもうトシ取っちゃったけど、彼女はまだ40歳という若さなのだ。とても興味深く、彼女のそうした「余分な」動きを見ていた。ま、余分じゃないけど。
演奏そのものは、素晴らしいとしか言いようがなかった。例の「Blackbird」も、しっかりと即興演奏が加えられ、分厚くて聴き応えのある音楽となっていた。激しいだけではなく、朗らかなバラードもあり。まさに骨身を惜しまない、全身を使ってのパフォーマンス。立ち見ができる理由がわかったような気がした。彼女は、ピアノソロにおける自分の臨界点を超えようと、挑戦している。そう、これは挑戦なんですね。我々は、もしかしたら歴史に残るかもしれない彼女の「一閃」を観て聴いているのだ。スゲーな。
最後は割れんばかりの拍手。アンコールはちょっと物足りなかった?けど、あの大曲を弾いた後だもんなー あれは消耗するよ。ともあれ、上原ひろみの「本気」をみた一夜となりました。満足。帰りはCoCo壱番屋でテキトーに食って帰路につきました。関係ないけど、関西将棋会館も拝見して、得した気分。以上、近況を記しました。