2017年を振り返るのは次回に譲るとして、25日に夫婦水入らずでフレンチレストランに行ってきたので、そのことについて書いてみます。私という人間は、家庭では役立たずです。いつもお蝶夫人♪が大車輪の活躍をしている。「申し訳ないな~」と思いつつ、Blog書いたり大人の塗り絵したり、ジムに行って汗かいたり。炊事洗濯掃除、どれも任せきりです。だからこそ、ここというときは彼女のために、しかと散財したいと常日頃から思っています。そういう流れで、今回は美味しいフレンチを、というわけです。
私はフレンチレストランなんて、数えるほどしか行ったことがない。その乏しい経験から、ここは行ってみたいというお店がありました。ル・ゴーシュ・セキであります。2014年の夏に、お蝶夫人♪の誕生日祝いで訪れた。そのときの「驚き」は、格別だった。その後、C店やE店に行ったけど、そこまでの「驚き」はなかったのです。ずーっともう一度、訪れたいと思いつつ、三年以上の歳月が過ぎてしまった。
栗東市役所の近くにあるので、車で15分くらいか。関シェフが一人で料理して給仕もされる。だから、同じ時間帯に二組は無理。文字通り「隠れ家」的な店なのである。関シェフは、ひたすら寡黙である。やや気まずい空気もあるが、出てくる料理はすごい。絵画がたくさん飾られていて、たぶん関シェフは芸術脳なんじゃないかと推測したりする。あ、芸術脳だけど、数学もできそう。繊細で緻密、そんな感じ。そして自分にも他人にも厳しそう。ま、プロは大体そうだよな。
各論いきましょう。写真をのっけていきますが、私は下手くそです。料理の美味しさを視覚的に伝えられないのが残念です。関シェフ、すんません。
前菜その一。牡蠣の燻製とウニとキャビアに、カブのペースト?が絡まっている。海の幸にカブのペーストがとても優しい。燻製にした牡蠣は、臭みが抜けて食べやすい。とても上品で軽い前菜。
前菜その二。フォアグラのキャラメリゼ、焼きリンゴとともに。これ、とても深くて半端なくうまい。焼きリンゴにはシナモンが加えてある。前回はいちじくが使われていたが、シナモン風味の焼きリンゴも上々の組み合わせ。フォアグラって、ほんのりした甘みとか苦みに合うのかな? フォアグラの炒め具合も絶妙。まさにテンションの上がる一品ですね。パンも大変に美味しい。鯛のリエットもグッド。
前菜その三。よこわとほっき貝のサラダ、ラズベリーのソース。ピンクの花びらが散っている様子で視覚的に愉しめる。さっぱりといただける皿です。底に玉葱のスライスがしっかりと敷いてある。この玉葱が甘くて美味しい。ほんのり酸っぱいソースで、さっぱり、さっぱり。
前菜その四。赤座えびとぐじのポワレ、エストラゴンソース。パリパリと優しさの狭間で楽しめる皿です。つけ合わせにカボチャときのこ、そして隠し味としてのゆり根。これらはとことん優しい食感。えびの甲殻とかぐじの皮のパリパリと対極をなす。赤座えびの甲殻は、この際ばりばり行っちゃいましょう。そのためのポワレですからね。
肉料理。鴨肉のロティール、マスタードとマデラ酒のソース。下仁田ねぎ、安納芋とレーズンとともに。鴨肉は普通にうまい。ねぎが大変に甘くて美味しい。お蝶夫人♪の調査によると、群馬県下仁田町の特産品で生のままでは非常に辛いが、加熱すると非常に甘みが強くなり、柔らかい滑らかな食感となるらしい。肉料理のつけ合わせとしては最高やな。そしてお蝶夫人♪が感心していたのが、安納芋とレーズン。これもローストした鴨肉に摩訶不思議なインパクトを与えていた。サツマイモとレーズンという二種の異なる甘みが、鴨肉をもり立てる。考えて見ると、鴨肉ってそうした「自然な甘み」に合うんだろうね。
デザート。紅茶のフラン。フレンチにおけるプリンのようなもの? でもプリンとは明らかに食感が異なる。お蝶夫人♪も「これ、初めてやわ~」と感心していた。量もちょうどよい。E店のようにお腹いっぱいなのに、デザートてんこ盛りでだしてくる店は困りもの。あの時はお蝶夫人♪が冷や汗かいていた。その後、コーヒーと紅茶、つけ合わせに手作りのトリュフチョコ。焼きたてのフィナンシェ。このトリュフチョコが最後に出てくるつけ合わせとは思えないほどレベルが高い。唸ってしまった。
さて、関シェフは一人で黙々と仕事をされる。愛想笑いは一切ない。テーブルはみっつある。つまり三組の客はもてなせるように、ハードは仕上がっている。店内は絵画や装飾品が品のいい感じで飾られており、ちょっとした「異界」である。なかなか贅沢で気の利いた空間と思うけど、一度に一組しか対応できないというのは残念。やはりもっと多くの人に、このすてきな料理を味わって欲しい。なんかもったいないと思う。
よい時間を過ごせて満ち足りた気分。特にお蝶夫人♪は大満足で笑顔だった。2017年の澱のように蓄積した疲労が、少しでも取れることを祈った。会計して我々を見送るとき、ようやく関シェフから微笑がもれた。フレンチでお高いけど、また来ようと思ったのでした。