ひさびさに「漫画でBlog」やってみよう。今回は「女ともだち/柴門ふみ作」より、「髪を洗う日」という作品をネタに語ってみたい。倦怠期を迎えた若夫婦のストーリーです。柴門さん一流の「キメ科白」がうまく入っていて、なかなか読ませます。まずは、あらすじから。
夏子と草介は同級生。16歳のときから付き合ってきて、23歳で結婚。現在四年目の夫婦である。でも最近なんだか噛み合わない。夏子はこの「微妙なズレ」にため息の毎日。野球の話題でも出さないと、丸一日くちも聞いてくれない。草介は草介で、歯磨きしながら「あ～あ、恋がしてえなあ」と。
おまけに辞められもしないくせに「こんな会社やめてやるんだ」が口癖。要するに「大人としての覚悟ができていない」人なのね。こんなだから、子供をつくるような流れにもならない。夏子いわく「子供が子供つくってもしょうがないよ」というわけ。
二人と高校時代から友達の俊子は、デパート勤めを辞めて「パーッとやるんだ」と夏子に宣言する。や
や怪しげなホストクラブに入会したのだ。夏子と俊子のいる喫茶店にやってきたのは、18歳のさわやかな青年だった。夏子はちょっとしたカルチャーショックを受ける。
その夜、草介に対して「ソープランド行ったことある？」と夏子が不意打ちをかける。
「あるよ」とぽつりとつぶやく草介。「男にはあるんだよ、付き合いが」「遊びだよ。浮気のうちにも入らないね」と流そうとする。夏子は驚くが、自分がそれほど嫉妬もわかないことが、何より彼女を面食らわせた。「それほどまでに、この男に興味がなくなっていたんだ」と。
夏子は行動に出る。そう、例のホストクラブである。草介が女を買うならば、あたしだってやってやる。喫茶店にやってきたのはIVYタイプの若者。さわやかなのだが、夏子はその眼差しに「ビジネスライクな冷たさ」を感じて怖じ気づく。「今日は食事のみで」とかわそうとするが、向こうもプロ。あれこれ丸め込まれて結局、気がついたらラブホテル(ご休憩)へ。
先にシャワーを勧められて、バスタブにて裸で湯加減をみる夏子。11年間ずっと草介しか知らなかった。男イコール草介。そんな私に、あんな眼をした男は怖すぎる。ふと気がつくと、無意識にシャンプーするつもりで髪の毛を濡らしていた。夏子は一瞬ためらったあと、石けんでゴシゴシ髪を洗い始める。ホストの青年に「髪の毛を洗ってしまったけど、ドライヤー置いてないし、このまま生乾きになったら夫にばれる。だから今日は帰ります」と料金だけ置いて帰ってしまう。帰りの電車で夏子は自己嫌悪におちいる。「アホだ、まったく大アホだ。助けて欲しいと草介の名を呼んでしまうなんて・・。子供のまんまはあたしの方だ」と。たったひとりの男が滲みついてしまっている。「夫婦」なんだとやっとわかった。
一方、俊子はホスト青年につきまとわれて困っていた。そこで草介にお願いして「仮の夫婦役」を演じて、ケリをつけた。草介は「女がカネで男を買うとは、なんたる不届き者か！」と説教。夏子いわく「きみは何ですか？ カネで女を買ったんでしょ？」☞「立たなかったんだ」という草介の答えに爆笑する夏子。「おまえがいちばんいいよ」と草介。叱られた俊子いわく「夏子の話って草介くんのことばかり。今でも草介にべた惚れだって、いつも言ってる」と。
夏子は意表をつかれる。実際はあんなに草介のことをけなしているのに。無償の友情というやつ。いろんな感情が一瞬に錯綜して、夏子は草介に微笑みながら語りかける。「ふたりでいっしょに大人になっていこうね」「なんだそれ？」
どんな夫婦にも倦怠期って、くるよね？ 夏子と宗介は、付き合って11年目。長く付き合って「相手に飽きる」というのは、まったく自然な成り行きだと思う。
夫婦生活とは「色あせてから」が本番である。本作の夫婦は、結婚生活たった四年目である。しかも27歳である。ちょっと設定が早すぎやしないか？と思うんだけど・・ 一緒に生活して、例えば何かしら困難があって、力を合わせてそれに対峙する。これだけで、夫婦たりうると思うんだけどね。そのようにして、夫も嫁も「大人になっていく」わけです。そのプロセスこそが結婚生活だと思います。夫婦を「戦友」と呼ぶことに以前は抵抗があったけど、今はやはりそうなのかな？と腑に落ちたりします。愛から友情へ。動物的な交わりから、人間的な関わりへ。結婚生活のシフトチェンジとでも言いますか。
