「ジャンヌ・サマリーの肖像」を描いてみた

JSportrait3_11月から取り組んでいた「ジャンヌ・サマリーの肖像/ピエール=オーギュスト・ルノワール作」ですが、ようやく完成したのでご覧ください。今回のはいわゆる「大人の塗り絵」からは逸脱して、下絵も自分でこしらえて100%手作りでやりました。画材はmarumanのVIFART(N.P.surface F3 S23V)、クーピーペンシル(60色)、ダーマトグラフ(黒、白)。

今回、この絵を描くうちに、いろんな気づきがありました。一部はすでにTwitterで語っていますが。私がもともとこの絵に触発されたのは、2013年のプーシキン美術館展でした。もうなんかね、当時はジャンヌ・サマリー嬢にいかれちまったんで。頭がお花畑っていうかね。当時のBlogに「ルノワールはジャンヌ・サマリーに恋していたのでは?」みたいな仮説まで臆面もなく立ててしまった。


でも自分でこの絵を描いてみて、当時の斬新な?仮説は間違いであると思うようになりました。やはりルノワールは、あくまでも真剣に表現の可能性を探っていたのだと。その証拠として、プーシキン美術館展の宣伝としてメディアに流布された「ジャンヌの肖像」と、リアルな「ジャンヌの肖像」との乖離があります。当時、わくわくしながら原画の前に立って「ふーん・・・」という妙な雰囲気を感じ取ったのは、私だけではなかったはず。それはもしかしたら一種の幻滅だったかもしれない。メディアに流された「ジャンヌ・サマリー」があまりにも華美すぎたから。原画はずっと地味です。あれは主催者側の一種の情報操作だったと思っている。ただ、その目論見はずばり的中し、空前の動員数を叩き出34したんだけど。(左:メディアに流れたもの、右:より原画に近いと思われるもの)

S portrait

もちろん今回は「できるだけ原画に近い感じ」で描こうと思いました。でも、ホントにこの絵を自分で描ける時が来るとは、思ってなかった。人の顔というのは、やっぱ難度が高い。一番むずかしいのは「夢想する瞳」です。まどろむような、ちょっといたずらっぽい、そして不思議に和ませてくれる、この瞳を中心とする表情。目がくらむほどのハードルですが、徐々に書き始めました。

ほんわかとした「まどろみ」、これ難しい。これ、神業ですよ! 描いているうちに、ふたつポイントがあることに気づいた。ひとつは瞳の中心がやや上を向いていること。こちら(正面)じゃなくて、やや上方をぼんやり眺めている感じかな。もうひとつの虎の巻は、眉毛の位置がやや高いこと。もっと細かくいうと眼裂上端と眉毛の距離が、やや離れている。これにより、なんとも言えぬ「ほんわか、のんびり」した目もとが出来上がる。このことに気づいたのが眉毛を描いた後だったので、急遽、左の眉毛をちょっと上にずらす「大手術」を敢行。ここではダーマトグラフ(白)が活躍した。これだけじゃなく、ルノワール先生はジャンヌの顔には、あらゆる秘術を惜しむことなく投入しています。顔の輪郭とか唇なんかも、すごく深いです。どうしても「原画に近づけない領域」がある。悔しいけど。

これでいったん、絵を描くことからは離れたいと思います。しばらく詰将棋しようかな。今年の「大人の塗り絵」に出品するかどうかは微妙です。やはり「大好きな絵」を模写したいし「大人の塗り絵」のコンセプトと私の方向性に、やや齟齬があるかと思うので・・ またいろいろ考えて、秋ごろに決めたいと思っています。それにしても、このトシになって「夢中になれるもの」があることって、幸せなことだと感謝したいです(Blogもそうだけど)。