近況(ネガ)・・京都漂流その壱

8月11日(月)の20時ごろ、俺は琵琶湖線の京都方面行きのJRに乗っていた。頭の中は混乱し、何も考えたくなかった。荷物は仕事用のリュックとボストンバッグ。車窓にうつる自分をみて「俺はなにをやっているんだろう」と考えた。でも、なにも答えは見つからなかった。

京都駅に着いたら、テキトーなホテルに入っていく。フロントでいきなり「三連泊でお願いします」と言ったら、担当のお姉さんはちょっとビックリされたが、冷静に部屋をPCで割り出す。「ツインでよろしければ、ご用意できます」・・ちょっとこちらもビックリするくらいの額だったが、この際そんなものどうでもよい。さっさとチェックインの手続きを済ませ、部屋へ急ぐ。スタッフはきびきびしていて、いい感じだけど、いかんせんハードが古い。ビジネス向きではなく、もろに観光用のホテルらしく、外人や家族連れ、団体客が多い。わけのわからん言語が飛び交う。

近くのコンビニで必要物品を買い出して、ベッドに仰向けになる。Blog「Steve Jobs伝記を読んで(1)」の文章はできていたので、iPadからアップ作業だけしておく。iPadからの作業は、けっこう疲れる☞そのまま就寝。五階だったが、どうも中国だか韓国だかの体育系大学生?が同フロアの部屋をほぼ占拠しているらしく、夜遅くまで奇声や騒音で悩まされた。まるで修学旅行のノリだな。ある意味、生き地獄だったわ。


8月12日(火)

いちおうよく眠れた感じ。朝食は、昨夜コンビニで買ったものを粛々と食べる。京都駅から電車に乗るので、いつもよりはゆっくりしたスケジュール。フロントには人がいっぱい。人をかき分けるようにルーム・キーを預けて、ホテルを出る。本日は午前の一般外来のあと、午後の予約外来。仕事自体は、わりと普通か軽めだったと記憶している。昼食は、診療所近くの「fifty」というなじみの店で、オムライスを食べた。今思うと、その日の俺の「暗さ、とげとげしさ」に、ナースも店のご主人も、ちょっと煙たがっておられた気がする。気のせいかな(笑)。ホテルに戻り、いったん寝る。

19時ごろだったか、起きてシャワーを浴び、メシを食いに外へ出る。iPodで音楽を聴きながら、京都駅前をさまよい歩く。どこで食べようとか、まったく決めていなかった。テキトーなJazzを聴きながら、ごみごみした都会をぶらつくのも一興。いちゃつく若いカップル、外人パブ?に群がる西欧人、足早に過ぎ去るリーマン、呼び込みのお兄ちゃん、地べたに座る少年・・そういったカオスが、次第に俺の頭をかき乱していく。

そうしたカオスの芳香が、ある原風景を呼び起こした。大学時代に旅したタイ、ネパールの雑然とした人の群れ。屋台がひしめき合い、人がごったがえし、熱気があふれる夜。そこには男女の愛があり、人々の悲哀があり、商売の駆け引きがある。酒とタバコはもちろん、もっと「毒」は街にあふれているのかもしれない。でも、そこで俺が感じたものは・・ 人間の活気というか「人が生きている感じ」なんだな。ああ、こうしてみな、生きているんだな、と感じた。20代前半に感じ取った、あの「生き生きとした匂い」を、また再び嗅ぎ取った気がした。

ふと気づくと、京都駅の東側に来ていた。そうだ、ラーメンの「本家第一旭」って、相当久しぶりだな! 知らない店に入るより、久しぶりの店に入る方が、面白そう。行ってみると、これがすごい行列なんだな。ひえ~、相変わらずすごい人気やんか。10メートルくらいの行列の最後尾に、果敢にならぶ! こちとら、用事らしい用事はないんだ。けっこう若いカップルがいたりして、ちょっとビックリ。女子はこういうとこ連れてこられて、嬉しいのかな? でも学生っぽいし、しょうがないか。と言いつつ、36歳でお蝶夫人♪と付き合っているころ、よくラーメン屋にいったもんだが。ああいうとき、女子は「実はイヤ」とは言いづらいんだよな。

それにしても、行列が動かない! 夜だから、回転が遅いみたい。しかし乗りかかった船なので、じっと我慢の子。後ろのカップルが、なんかもめてるし。30分くらい待っただろうか、ようやく店内へ。俺はシンプルにラーメンと餃子で決まり。「麺かため」とか「ネギ多め」とか、細かいこと言う奴いるけど、面倒くさいわ!(▼▼メ) 席はカウンターで、例のカップルのとなり。まずラーメンがくる。俺は想像を絶するほどの空腹だったので、一気にとりかかる。そう、ラーメンなんてもんは「一気にとりかかる」べきもんやで。カップルでちんたら食ってる場合やないねん。まず麺をすべて制覇する。第一旭って、けっこう麺の量たっぷりだな。それからおもむろに、スープを。もちろん途中に餃子が到着しているので、それもリズミカルに胃袋に放り込んでいく。

ふと横を見ると、例のカップルがどん引きしていた。知らんがな。腹へっとったんや。完食すると、勘定を済ませて、そそくさと店を出た。やはり「名店」というのは、ピリリとした雰囲気がある。客扱いがちょっと上からだったりするけど、注文のさばき具合とか、神業に近い。味もさることながら、本家第一旭という名店は、しかと今に生きていると感じた。たぶん10年ぶりくらいだけど、変わらないものを「感じられる」というのは、幸せなことだ。俺は大いに元気づけられて、ホテルに戻った。