近況・・マイコでてんてこまい(2)

(承前)もう一度寝室へ。咳(主に乾咳)がひどい。こんな咳はあまり経験したことがない。むせるような咳。これって、明らかに悪化してるよな。副鼻腔炎からの熱としては、違う気がする。これ、マイコプラズマちゃうん? ベッドの上で、疑いが次第に確信に変わってくる。パセトシンが効かない理由も、マイコだとすると合点がいく。まいったな・・この展開は想定していなかった。私はいちおう医師なので、いろいろ薬を常備しているけど、マイコに効くような抗菌剤は持っていない。

しんどい体を「えいっ」と起こして、リビングへ。忙しく家事をしているわが妻に「クラリス(マクロライド系抗菌剤)あったっけ?」と訊いてみる。これは神だのみに近い。ある方がおかしいと思っていた。念のために確認だけしておこうと。彼女はまたしても、機敏に自分と息子の薬の保管場所をチェックする。すると奥の方から、息子が数か月前に飲んだ「クラリス」の余りが、三回分だけでてきた。えええ~!まじかよ。渡りに船とはこのことか。最近はクラリス耐性のマイコもあるんだけど、どうせダメもとじゃ。☞ 貴重な一回分を服用。


その後、寝室で横になっていたが、わりと体感的に効いている気はした。咳も少し減っているような? 23時頃には熱が38.2度まで上昇。でもそのときには、むしろ体は楽な感じになってきていた。問題は、明日の午前の外来をどうするか。どうせ明日の朝までは連絡できないので、明日の朝、全てを判断することにした。ただ、わが妻は「明日は休診」という心づもりになっていたし、私も38度の熱がある現状で「明日行ける」という風には、正直思っていなかった。

その晩、クラリスのおかげか、よい睡眠がとれた(午前5時に、二回目を服用)。ようやくぐっすり眠れたという感じ。いわゆる「治癒の眠り」というかな。ふと目を覚ますと、いつもの出勤時刻の7時半前だった。わりと爽快な気分。熱を測ると、36度ジャスト。朝食はお蝶夫人♪特製のおかゆ。昨夕とは打って変わって、ぱくぱく食べた。完食。

さて、どうするか。リビングの絨毯の上で、しばし沈思黙考。お蝶夫人♪はすでに「休診」という頭でいるが、今から急いで診療所にでかけたら、9時半には間に合う。それなら、少しでも外来業務のマンパワーとして、役に立つんじゃないか? 午後の心電図はすでにキャンセル済みだし、半日ならなんとかなる・・かな。この判断を、わが妻に伝えると「大丈夫?」と心配顔になったけど、私の表情をみて同意した。そしてT診療所の事務長さんへ電話。現状を説明して、9時半からの診療について、承諾いただいた。

そこからはジェットコースターのような展開だ。診療所には9時半前に到着。9時予約の患者さんに「先生、サッカーみてたんちゃうの?」とか言われて「そうか、今朝コロンビア戦だったな」と思い出した。試合結果は完敗だったようで、その患者さんは終始不機嫌だった。そうした対応をしているうちに、自分がようやく「世界の時間の流れ」に追いついたような気がした。

ひととおり診療が終わったのが13時頃だったか。異様な寒気を覚えたので、ふと白衣を触ってみると、汗を吸ってじとじとだった。多量の発汗があったと思われる。このままでは、また体調を壊すと思ったので、いったん白衣を脱いで近くのコンビニへ。白のTシャツを買って、着替える。白衣も新しいのに代える。そうして、手持ちラストのクラリスを服用。もちろん、すでに補充のクラリスは手配済み。

こうして、なんとかもくろみ通り、事は進んだ。私の「マイコ気管支炎」という病気に関して、なんとか最小限のご迷惑で済んだかなと思う。心電図の方は、K診療所の先生方、本当にご迷惑おかけしました。申し訳ありません。でも、25日(水)の心電図は、絶対に無理でした。それにしても、奇跡的なクラリス三回分。これが天下分け目だった。これがなければ、25日は、完全にダウンでした。以上「マイコでてんてこまい」と題して、近況を記しました。