再会・・「女ともだち」より

漫画でBlogのコーナー! お気に入りの短編漫画をネタに、まるちょうなりに語ってみたい。今回は柴門ふみの「女ともだち」より「再会」という短編を取りあげてみます。医学生との恋模様を描いています。とりあえず、あらすじから。

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波子は短大生のころ、あるAB型の医学生と同棲していた。その医学生が波子の部屋におしかけて、居すわったのだ。波子はできれば結婚までもつれこみたい。だって、お医者さんの卵だし。でも・・そんな波子にも、たったひとつのプライドがある。それは「結婚してください」と、自分から決して言い出さないこと。医学生は、そんな波子の心情を知ってか知らずか、のらりくらりと逃げる。ある日「引っ越す」と言い残して、彼は出て行った。実際は他の女性と暮らし始めたのだ。現在、波子は22歳、独身。短大卒業後、デザイン専門学校に入り直し、今は小さなデザイン会社に勤めている。

20彼女の一番の愉しみは、化粧をしながら空想の悪に身を浸すこと。(医学生)「波子!ごめん!俺が悪かった! なんであんな女に惹かれたのか・・ できることなら、やりなおしたい。結婚したい!」(波子)「ゲームでしか女を愛せない臆病者! あんたに結婚なんてできるもんか! こっちからお断りよ!」☞わはっ!決まり! 再会の日の空想は、心の栄養クリーム。頭のブラッシング。私は絶対に下手に出ない。見返してやるんだ。


鼻先の冷笑であいつのプライドをコナゴナにしてやるんだ! フフーン!・・と言いつつ寝入ると「結婚してよ、結婚してよ~っ!」と彼にすがる夢をみてしまう。ある日、本当にその医学生と街中でば35ったり出会ってしまう。この日よ!この日のために、シーンとセリフを練りに練って生きてきた・・ だのに、彼はあの頃のように冷淡でなく、言葉も優しい。「僕なんかまだ学生ですし、それに医者も過剰の時代を迎えるんです。なんかこう、自信ないなぁ」波子は思わず、励ます側になってしまう。「あなたは理性的だし、大丈夫! 立派にやってゆけるって。元気だしてよ!」・・バッカみたい。あんなマヌケた男に成り下がっていたとは。あんな男、興味ないわもう。酒のんで寝よ・・

17夢のなかでまたしても「お願い、結婚してよ~」「離せよ、うるさいなぁ」この古びたやりとりが出てくる。あれ?これは夢だ!だってあたし、もうこの男のこと全然好きじゃないもの。あれ?声が出ない! ちがうのよ! ちがうのよ~!! うわ~!!

目が覚めて、もう一度泣けた。情けなくて泣けた。それはけして男への未練などではなく、空想芝居の中に閉じこもり、無駄に過ごしてしまった時間への後悔。現実を知った後までも追っかけてくるほど身についてしまった一人遊び。15形骸となってしまった愛にすがりついていた惨めさ。情けなくて、泣いた。


俺、かつてAB型の医学生でした(笑)。あ、AB型は今もそうだけど。この男みたいに、器用に女を渡り歩くような学生生活だったら・・(遠い目) でもこんなん、女から見たら「こいつ、しばいたる」みたいな輩であり、不謹慎きわまりないのであります。作中でてくるAB型の血液鑑定では「ずるくて抜け目なくて、頭が良すぎて冷たい」だそうです(笑)。これ、現在は当たってないけど、たとえば学生時代に前記のような「不埒な生活」をしていたら、そういう人でなし的な若者になっていたかも。

でも、作中の医学生って、なんか共感しちゃうんだよね。だめっすか?(笑) 「何であたしを抱いた53の!」「おまえが誘ったからだ」☞ありがち! 今でいう「草食系」男子の恋愛パターンだろうな。「誘わなきゃ、手を出せなかったくせに・・」という波子の独白も痛いとこをついている。「ねぇ・・たまには、つけないでやってみない?」「いや・・こういう08ことは、ちゃんとしとかなきゃ」とボロを出さない医学生。20年も前に「草食系男子」を予言していた柴門さん、スゲーな。

この医学生の根底にあるのは「自信のなさ」だと思う。アイデンティティが確立していないので、他27者に依存する。この場合は波子だ。女性を引っ張っていくこともできず、自分の医師としての将来にも漠然とした不安を抱えている。「俺についてこい」みたいなタイプじゃないのね。波子は街でばったり再会して、「医師の卵」というイメージが幻影に過ぎなかったことを悟る。つまり、彼も単なる一人の悩める若者だったということ。波子の方が「生活者として」よっぽどしっかりしてるし、胸を張っていい。

「お願い、結婚してよ~!」と言って男性にすがりつくという光景。これほど女性にとって赤面するシーンはないだろう。赤面というか、これはもう正視できない状況だ。でも・・そうした「死にたいくら59い恥ずかしい光景」は、どんな女性の心にも、意外と潜んでるんじゃないか。つまり、深層心理という意味で。波子は、心の深いところに「恥ずかしいシミ」がついていた。いつの間にか、そうした「虚ろな記憶」とのじゃれあいが癖になっていた。最後の一人でベッドで泣くシーンは、ちょっと身につまされる。

最後に。何度も言いますが、私は「青春という果実」を、美味しくいただけなかった人間です。青春という果実? そんなんあるん? 遠い目で自分の過去を振り返っても、青春時代は戻ってこない。もっと普通に恋愛して、普通に失恋して、普通の医学生でありたかった・・なんて言いつつ、後悔はとくにしてないんですけどね。でもこういう漫画を目にすると、そういう「青春という果実」に一種のやっかみを感じてしまう。分かりやすく言うと、今話題の「テラスハウス」なんかね。でも、アラフィフのおっさんの意見としては「青春の果実」なんてものは、すべて幻想である。すごく甘そうで、心動かされるけど、結局は「感傷」に過ぎない。大人になってから、自分の過去に「ないものねだり」をすることに他ならない。ちゃんと「大人としての自覚、矜持」を持とうと思ったのでした。以上、漫画でBlogのコーナーでした。