昨日の外来で、ちょっと小ネタができたので、ショートBlog書いてみます。題して「近況・・久しぶりにPSVT止めた!」。
昨日の外来は2診体制。連休明けなので、本来は忙しいはず。しかし、出だしはわりと少なめ。「わりと楽勝でいけるのかな?」なんて、呑気に構えていた。そこへ「処置室で診察お願いします」のカルテがまわってくる。70代の女性で、普段は高血圧などで定期受診されている。主訴はめまい、ふらつきなど。ささっとカルテをみたところでは、八月に、頻脈がらみで二週間くらい入院されている。発作性上室性頻拍症(PSVT)だったようだ。このときも、ふらつきが主訴。
処置室に行くと、顔色の悪い感じで、女性は横たわっている。血圧は上が70台。心拍数は130から140程度だったか? 150くらいあったかも。脈は整で「やはり今回もPSVTかな?」と推測した。現状、軽い心原性ショックなので、早急な対応が必要。とりあえず、採血、点滴、心電図、モニター装着、SpO2測定など。いちおう心筋梗塞は除外しておきたかった。モニターECGは、ひとめPSVTでいいと思ったが、もう少し検査が出そろうまで動くのは控えた。その時点ではルートも確保されてないし。
さて、このあたりから外来が忙しくなってくる。なんや、やっぱり普通に多いんやん。次第に汗が吹き出てくる。脳裏に頻脈性不整脈でショック状態の女性が浮かぶ。苦しそうに横たわるその姿に、何か急かされて、外来業務をこなす。そして、ちょっと一段落したら、処置室へ顔を出してみる。採血は異常なし。12誘導ECGもPSVTで決まり。ルートもとれた。さて、どうするか。ワソラン静注してもいいけど、けっこう時間をかける必要がある。外来業務に支障が出ないか? C病院に転送して、そこのQQ当番にしてもらう方が、いいのかもしれない。どうしよう?
不思議なんだけど、なんかそこで自然と体が動いていた。咄嗟にバルサルバ手技をやっていた。気がついたら、その女性に指導していた。「息をこらえて、ぐっと力んで!」・・最初はうまく行かなかったが、二回目で顕著な脈拍低下。50台まで落ちただろうか。そこで、ゆっくりとした呼吸にもどして、定常状態へ。すると、見事にPSVTが解除(心拍数60程度)した! これは自分でもびっくり。もうちょっと様子を見て下さいと、処置室ナースに告げて、さっそうと外来診察室へ戻る。この時の気持ちよさといったら! どんなドヤ顔だったかと思うと、ちょっと恥ずかしい。自分で「うわ、俺かっこ良すぎるやん~」ていう感じで、キーボード打っていた。お笑いの小藪さんがいたら「なに、イキっとんねん!」とツッコミ入れられそうな場面(笑)。
これで一安心、と外来業務に専念していた。でも・・30分くらいして、またその70代女性のカルテがまわってくる。「あれ、もう治ったよな?」と思いつつ、もう一度処置室へ。すると、モニターの心拍数が150ー120程度になっている。あれあれ? またPSVTに戻った? モニターではP波が出ている気もしたが・・ 脈はやはり120程度はあったと思う。PSVTへ逆戻り・・ しゃーない、ワソラン行ったろやないか。流れ的には、やるしかないわ。って感じで、外来はちょっと停止させていただき、ワソランを慎重に静注。静注そのものが、めっちゃ久しぶりだったので、すごく緊張した。三方活栓のふたを取るのさえ、ちょっと手が震えたよ。ワソランを1アンプル全部静注したが、心拍数は落ちない。あれ~、おかしいな~? しかし、外来業務がつかえているので、いったん戻る。しばらくしてから、洞調律に戻ることもあり得る。
昼前後の忙しい時間帯。なんとか外来業務に区切りをつけて、また処置室へ。本人さんは「かなり気分はましになった」とおっしゃる。モニターは、依然として心拍数130ー150程度か。でも、波形をみても、そんなにR-R間隔が狭くないんだよね。それにP波も出てる感じだし。ためしに脈をとると、やはり70程度だ。あれ?これモニターおかしいんちゃう? うーん・・と唸っていたら、ベテランのM看護師が「もう一度、12誘導とったらどうですか?」と貴重なアドバイス。そうですね、それいいっすね ☞ 結果としては、ちゃんと洞調律。そして、よく確認すると、心電図自動判定では、高めのT波をPVCにとっていたみたい。モニターも全く同じミスをしていたんだと思う。要するに、ワソランは著効、洞調律復帰、HR60-70へ。その後、無事患者さんは無事帰宅されました。
総括。流れといっては身もふたもないが、C病院QQへ転送☞QQ当番の医師が対応するのが、ベターだっただろうか? 私がPSVTの処置をしたために、外来業務が停止☞もう1診のM先生にご迷惑がかかった可能性がある。ちょっとしゃしゃり出てしまったかな?との反省はあります。でも、バルサルバ手技や久しぶりの静注など、個人的には大変勉強になりました。処置室の看護師のみなさま、M先生、ご協力ありがとうございました。m(_ _)m 以上、プチ近況(長くなった(汗)を記しました。
<追記>
でもこれ、やっぱ処置はマンパワーのしっかりあるC病院QQに転送した方がよかったか。万一トラブったときのリスクを考えると、ちょっと危険だったかも。うちの診療所では、診断とルート確保くらいまでで、あとは転送が正解だったか。今になると、ちょっと反省しています。。
ちょうど難しいところですよね。
これってvalsalvaだけで治ってた症例なのかな?
もし・・・
先生が一人で開業していたら・・・
valsalvaを一応やって、ダメなら病院搬送、ですよね。
先生のところの立場がちょうど中途半端で
(今回は患者さんにとっては良かったんですけどね)
搬送のハードルが「やや高い」からこそこうなったのではないかと愚考します。
私のところなんかはハードルは超低くて、少しでも心配があれば紹介しちゃいます。
まわりからは迷惑がられるかもしれませんが、少しでも危険な状態を放置するわけにはいかないと思っているもんで。
「ちょっと危険だったかも」と言っていられるぶん、やはりバックがあるということのありがたみなのではないでしょうか?(^^
いずれにせよ、結果オーライなことって、普段よく出くわしますが、
「結果残念」では許されない仕事なわけでもあってね・・・。(^^;;
>カバ先生
確かに。バルサルバだけで治っていたかもです。
うちの診療所は「全くの一人」じゃないわけで。
それなりに、マンパワーあります。確かに「中途半端」なのかも。
やっぱり「一人ドクターの診療所」であれば、
今回の症例は、即、搬送でしょうね。
なんといっても、最初は軽い心原性ショックだったわけですし。
今回は若干「勢いで行ってしまった」感、なきにしもあらずでした。
バルサルバや静注で、万一、心停止など起こっていたら、
ちょっと大変だったでしょう。そうなっちゃうとマンパワー足りません。
そのへんが反省材料かと思っています。
「結果残念」は許されないです。「結果オーライ」でありたいものです。
先方に「なに騒いでんの?」と、ちょっと白い目で見られるくらいが
いいのでしょうね。
PS 今回は 話逸らん という絶妙な変換をした「ことえり」
☞ こんど夫婦喧嘩のときなんかに頓服したいと思いますw
私はワープロ変換では「し」という言葉を意図的にあの漢字に当てようとするワープロの製作者には軽い殺意が芽生えることも・・・(^^;;
「あの漢字」ですか?(笑)
ところで、うちの診療所、耳鼻科がやや手薄なので、>水、木、金
またいつか、お世話になるかもです。
よろしくお願い申し上げます。m(_ _)m
↑この挨拶、一番最初にすべきでした。すんません。