コトバ

お題を決めて語るコーナー! 今回のお題は「コトバ」。

私はスケジュール管理に関しては「ほぼ日手帳」を愛用している。この手帳の大きな特長のひとつが、毎日ちょっと面白い言葉が記されていること。「ほぉ、なるほど」とか「ふふ、おもろいやん」とか「しょーもな~」とか、いろんな感想があるんだけど、去る5/12の言葉は、すっと通り過ぎることができなかった。その言葉を紹介します。


「心臓をどきどきさせることも、徹底的にやる気をなくさせることも、

涙を止まらなくさせることも、笑いを呼び込むことも、

クスリではむずかしいことでも、コトバならできる」

<ダーリンコラムより>
これ、全くその通りだよね~。どの仕事でも言えることだろうけど、とりわけ医療従事者は、再確認の必要がある言葉だと感じた。ホント、コトバって薬にも毒にもなるから怖い。

医師をやっていて、コトバの怖さを一番感じるのは、やっぱり「癌の告知」ではないかと思う。あれは実際にはメスを用いないけど、患者さんにとっては外科手術に匹敵するストレスである。だからこそ、いかにコトバを選んで患者さんに「そのこと」を冷静かつ客観的に伝えて、しかも患者さんの辛さに親身になって寄り添うことができるか。この矛盾したふたつの作業をしなければならない点が、告知の難しさだろう。そういう意味では、告知はれっきとした医療技術なのである。その点を分かっていない医師がたまにいることが、とても残念です。

現在、まるちょうは外来診療(健診も含む)を主にやっているけど、一番大事にしているのは「笑い」である。笑えるポイントがあれば、どんどん笑う。受診者がニヤニヤすれば、しめたもの。例えば、眠剤を希望している患者さんで、今回は「グッ○ミン」をご所望。「アモ○ンではダメなんですか?」と訊いたら「アモ○ンは、ちょっと味が悪いからねぇ~」と、ニヤリとされる。こんな時は、こちらも「『味』ですか~?」てな感じで、大いに「ウフフ」と笑い返す。これで、診察室の雰囲気が一気に和むという具合。まぁ、実際の診療では、そんな場面は数えるくらいしか無いんだけど、笑いの多い外来診療ができれば、とても素敵じゃないかと思っている。「笑い」って、まさにクスリだと思うんだよね。精神的に緊張をほぐして、免疫力を増強する、食欲も出てきて、意欲も出る。いわゆる薬ではむずかしい効果である。家庭でも、学校でも、仕事でも、笑いがもっともっとあればといいなと思う。

コトバは薬にもなるし毒にもなる。だからこそ、日常のコトバの使用法は、できれば間違えたくない。なんとか相手の力になるようにコトバを選びたい。古い俳句にこんなのがある。

「物いへば 唇寒し 秋の風」(松尾芭蕉)
コトバという「諸刃の剣」に、今昔はないということだろう。だからこそ「沈黙は金」というような諺もあるんだろうと思う。でも、黙ってばかりもいられないしね。コトバの適正な使用法って、これこそ人生を通しての課題なんじゃないかな? それによって、人生って楽しくも悲しくも明るくも暗くもなるだろう。仕事と家庭と遊びの中で、もっともっと学びたいと思う、今日この頃です♪