Feel The Night

このCDを聴いて。今回は、フュージョンの名作を取り上げてみる。「Feel The Night」(Lee Ritenour作)。私が中学生の頃に兄がこのレコードを聴いていて「いい音楽だなぁ」と密かに思っていた。題名通り「夜を感じる」アルバムである。子供でも大人でもない、中途半端な年頃の私にとって、ある意味とても刺激的だった。まさに「夜→大人への憧れ」というか。それから幾歳月・・社会人になってから、CDとして店に並んでいるのを見つけて、ためらわずに買った。家に帰って「Market Place」を聴いたら、わけもなく涙が出てきて困った。

簡単に紹介を。Lee Ritenourはジャズギタリストの巨匠。とてもリラックスして聴けるアーティストである。タイプ的に言うと、Larry Carltonと似ているように思う。ただし、どちらもれっきとしたジャズギターの巨匠であり、それぞれの個性があるわけだけど。二人は1995年に、アルバム「Larry&Lee」で鮮やかなコラボを聴かせている。

あ、それと「フュージョン」という言葉の解説を、知らない人のためにしておきます。この言葉のもともとの意味は、融解とか融合。すなわち、主にジャズとロックが融合してできた音楽。要するに、二者のいいとこ取りを狙った分野です。ただ重要なのは、この分野の失敗作といわれるものの多くは、いわゆる「どっちつかず」に陥ったもの。強烈なパンチが欠けるというか。単に聴きやすいだけでは、人の頭の中に残るものは少ないということです。そういう危険性を初めから孕んでいる分野ではあります。

まずは「Feel The Night」。



まさに題名通り。今風に言うと「ちょいワル」な雰囲気のある音楽だ。これがヘビメタとかになると「極悪」になっちゃうけどね(笑)。「夜」への憧れをイメージさせる曲です。Lee Ritenourが奏でる暗示的なリフが、とても魅惑的である。思春期の人間にとって、このリフは、かなり強烈に訴えるものがあるだろう。少なくとも、私の場合はそうだった。

次に「Market Place」。



この曲は、夏の夕暮れに聴くと一番効果的だろうと思う。今でもたまにこの曲を聴くと、青春時代の甘酸っぱい郷愁が、心の中にわき上がってくる。まるちょう的には「心がざわざわする」という表現がピッタリの曲なのだ。繊細な導入から、次第に力強くたくましい雰囲気になっていくのがとても心地よく、まさに「感涙」である。

以上、フュージョンの名作「Feel The Night」について語ってみました。