俺は爆笑する人が好きです

俺はどこか芸人気質なところがあるのか、「人を笑かす」のがけっこう好きです。でも大体において、「笑かしにいって」じゃなくて、天然が多いです。「え? 俺そんなつもりちゃうけど」と心の中で思いつつ、相手が笑っているなら結果オーライでよし。相手の一瞬のカタルシスを感じて、俺も嬉しくなる。

俺が13歳のとき。「ミラクル・ワールド ブッシュマン」という映画が大ヒット。大混雑の映画館で、俺はブッシュマンにはそれほど興味がなかった。それよりも、生物学者のスタインと教師のケイトの関係について、すごく心配していた。だって、スタイン先生は、ケイト先生の前では緊張しすぎて、自分のよさを十分に表現できない人だったから。でも、ラストでふたりは結ばれる。映像を載っけておきます。



思春期の俺は「こういうのも、ありなんだ!」と、かすかな光明を見つけた思いだった。当時の俺は唐変木で、気が利かず、もちろん洗練もされていない厨二野郎だった。俺は「スタイン先生のように生きよう」と、決意したのだった。

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15年くらい前だったか、K診療所で健診外来の仕事をしていた頃。外来は二診あり、一診は俺、二診はN先生という女医さん。一診で話す声は、二診ではかすかに聞こえる。N先生は、けっこう爆笑する人だった。

S社の健診は「麻薬、あへん」の項目があり、受診者が「麻薬、あへん」を使用していないことをチェックする必要がある。いま思うと、俺もアホだったと思う。そうした問診で「麻薬、あへんやってませんね?」と言うのも、ちょっとおかしい。俺は俺なりの工夫で

麻薬、あへーん!(圧)   やってませんね?(ささやき)

と、なんの医学的根拠もない問いかけをしていた。すると、後ろの二診でN先生が爆笑していた。

爆笑されちゃったよー!😳 😳 😳

ちょっと恥ずかしかったけど、あれだけ「からり」と笑われると、悪い気もしない。

また、石綿健診の場面でS看護師が「いしわた健診ですよ〜」と言う。俺は「せきめん!」S看護師「いしわた!」俺「せきめん!」S看護師「いしわた!」そして最後に俺「あいあい」と折れた。そこで二診のN先生が爆笑。

爆笑されちゃったよー!😳 😳 😳

N先生は始業前に大きな音を立てて鼻をかまれていた。ああいう「割り切り」のできる女性って、好感が持てるかもしれない。「ぶぶぶー」と鼻をかむのは、生理的に必要なことだ。「それがどうしたのよ」くらいの気構えなんだろうな。今でいう「陽キャ」っていうやつかな。

あとひとつ、医療関連でのエピソード。T診療所で外来業務をしていた。60代くらいの男性が入室して、タール便と赤いものを吐いたという。バイタルは問題なかった。とりあえず、緊急胃カメラが必要なことは明白。C病院の内視鏡室に電話連絡した。女医さんが電話をとられた。俺は「T診療所内科の〇〇です」と前置きして、おもむろにこう言った。

60代男性で、、、 とげけつなんですわ〜(吐下血なんですわ〜)😭 😭 😭

電話の向こう側で、女医さんは「ブフッ」とウケておられた。「あれ?おもろかった?」と、俺はすこし怪訝に思った。もしかしたら吐下血という緊急時において「なんですわ〜」の、妙にゆるい言い方が面白かったのだろうか。「不意な矛盾」は、笑いにつながると思う。この時も、なぜか俺は「女医さん笑わせたぜ!」と小さくガッツポーズをとった(嘘)。

最後に。家で笑いを取ろうとして、いつもすべっている俺です。たいてい、笑いを取りに行くと、失敗するようです。そして、荒涼とした冷たい風が吹きます。ふとした(天才的な)天然ボケが炸裂すると、わりと人は笑ってくれます。スタイン先生を慕って、生きていこうと思う今日この頃です。