アナウンサー・・「女ともだち」より

あけおめことよろ。新年一発目は、漫画でBlogで行ってみたいと思います。学生のころ、柴門さんのおっしゃるこの奇妙な心理ついて、まったく理解できなかった。でもアラフィフの現在、あながちなくもないのかな?と感じておる次第です。こんな話し方では、埒があかないね。まずはあらすじから。

原ちづるは、27歳の平凡なOL。高校時代は結構モテたけど、25歳すぎたらパタッと男と縁がない。友達は「下町の妹」みたいだからと言う。「いい男って、かわいいだけの女にはあきちゃうのよね」という言葉が、ちづるの心に突き刺さる。でも、ちづる自身もそれは本当のことだと受け容れざるを得ない。

スクリーンショット 2020-01-06 22.31.32ちづるは20歳のころ、佐久井という男と愛し合っていた。彼はハンサムで聡明、ひとことで言えば「いい男」というやつである。ちづるはある日、ハッと気がつく。大人気キャスターの麻加みどりの旦那が、あの佐久井であるということを。麻加みどりは、頭がよくて美人で完璧という男性の評価。雑誌には「夫婦でランチ 麻加みどりさんご夫妻」という見出し。麻布のフレンチレストランでコース料理を食べている写真。

スクリーンショット 2020-01-06 22.31.45かたや、ちづるは会社で出前のチャーハンを食べている。ゴキブリが入ってたりして、情けなくなって泣いてしまうちづる。「麻加みどりの夫は、昔あたしの恋人だったの」と会社でカミングアウトしてみる。誰も信じない。ひとりの同僚が、ちづるの言うことを本当と認めた。そうして曰く「すごーい原ちゃんて、あの麻加みどりと争ったなんて。大したものよ、見直しちゃったあ」と。ここでちづるの中で何かがはじける。


佐久井さんとあたしは確かに愛し合っていた。ということは、あたしは麻加みどりと同等程度の価値のある女なんだわ。そうよ原ちづる、捨てたもんじゃないわ。日本中のサラリーマンの憧れの美人アナスクリーンショット 2020-01-06 22.32.19ウンサーとあたしは同等の女なのよ。それにあたしは「切り札」を持っている。

ちづるは佐久井を呼び出して会食する。元カノに呼び出され、やや警戒ぎみの佐久井。「あたしのことかわいいといってよ」「今でもあたしを愛してるといってよ」「きみの方がもっと素敵だといってよ」ちづるの心の声がそう言う。彼と話すうちにちづるは、もう彼のことをちっとも好きじゃないことに気づく。ちっとも好きじゃないけど・・ あたしのこと愛してるといいなさい。それであたしは麻加みどりと同等になれる。スクリーンショット 2020-01-06 22.32.49

「愛人もいるぜ」と佐久井。「はたちの女子大生。妻はもちろん知らない」 え?「子どもは?どうしてつくらないの?」「できないんだ。妻はかいようで卵巣と子宮の一部を切り取っている」 呆気にとられるちづる。あたしは・・いったい何をうらやんでいたのだろう?

別れ際に「切り札」をちょっとだけ仄めかすちづる。「思い出すまでおしえてあげない」と小悪魔な笑みを浮かべて。やや動揺する佐久井。そのすごい「切り札」とは・・横浜の港のそばの公園のベンチに刻まれた相合い傘のことであった。「どうだまいったか!」 テレビに映る麻加みどりの顔にあたしの顔がかぶさって見える。
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よくある現象として、美人の奥さんがいながら浮気してしまう夫というパターン。極私的な考察を言いますと、美人の奥さん(麻加みどりみたいな)と同等になりがっている女が、その夫を誘惑するという図式です。その夫と肉体的な関係を持ち、相通ずるものができたとしたら、その女はステージが上がるとスクリーンショット 2020-01-06 22.33.46いう幻想です。わかりやすい例を挙げるとしたら、2009年の陣内孝則と藤原紀香の離婚のケース。この場合、男性に寄ってくる女性は、その男性を好きでもなんでもない。むしろ軽蔑さえしているかもしれない。なぜなら、その女性にとってこの男性とは、ステージを上げるための道具に過ぎないから。



そうしたややこしい女性の心理を見事に映像化しているのが、「セックスと嘘とビデオテープ」という映画です。優等生で堅実な姉と酒場で働く奔放な妹。妹はずっと姉に劣等感を抱いている。姉の夫はやり手の弁護士だが、英雄色を好むという奴で、やや脇が甘い。妹とその夫はすでにデキており、密会を重ねる。妹にとってクライマックスは、姉の自宅での性交である。これにより、姉を凌駕したという一種の征服感を味わうのだ。もちろん妹はその弁護士の夫を軽蔑している。彼女にとって、彼は道具でしかない。

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ここで働いている心理は、ルサンチマンと呼ばれるもの。強者に対する嫉妬、反感、憎悪、そして復讐衝動。男性を共有することで自分が「強者」のレベルまで引き上げられるという恣意的な幻想である。おっとろしい。この心理には、出口はない。だって幻想だから。リアルには麻加みどりは不妊だし、佐久井も愛人を囲っている。すべてはメディアを通しての虚像。実際には「強者」ですらない。ちづるのルサンチマンは、どこか可愛らしい。彼女は誰にも危害を与えていない。彼女にはいつか「下町スクリーンショット 2020-01-06 22.34.09の妹」らしい恋の成就をして欲しい。麻加みどりの顔に、自分の顔をかぶせる必要は全然ない。ルサンチマンをまずは捨てましょう。話はそれからです。以上、漫画でBlogのコーナーでした。