「皿の上の三つの桃」を描いてみた

8月から取り組んできた「皿の上の三つの桃」が完成したので、アップいたします。作者はアンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)というフランスの画家。印象派の画家たちと親交厚く彼らの姿勢に共感していたものの、彼の絵画の方向性は「写実」だと思います。特に静物画の控えめだけど異様な存在感はすごい。

皿の上のみっつの桃(最終2)


この絵は、Twitterで偶然流れてきました。そして「ほほ~」と感嘆したわけです。すごくシンプルな構図だけど、なにかしら心に迫り来るものがある。控えめだけど、大胆で、緻密で、どこか偏執的。「大人の塗り絵」は色えんぴつを用いて、描き込んでいくジャンルです。必要なら消しゴムで訂正も可能。だから「緻密な絵」というのは、わりかし「大人の塗り絵」には合ってるんじゃないかと思ったんです。師走までになんとかしたかったんですが、まずまずいい感じで描けたと自負しています。画材を記しておきます。サクラクーピーペンシル60色、三菱えんぴつ 4B、ダーマトグラフ(白)、修正ペン、maruman VIFART(N.P. Surface F3 S23V)。


IMG_0322


原画をアップしておきます。平凡な構図に漂う静かな狂気。この絵画をひと言で表現するとこうなるか。桃の描写もさることながら、机の表面の筆の入れ方が尋常ではない。この方法論は、つまり「写実」から来るものだと思っている。机の木目をひたすら写実的に描こうとしたら、どうしてもこうなる。そのやり方があまりに逸脱しているので「狂気」とか「偏執的」という言い方になるんだな。

440px-Henri_Fantin-Latour_001

これは想像ですが、ファンタン・ラトゥールという人は、相当に誠実な人だったんじゃないかって。なんの根拠もないけど、そう思う。直感的に。逸脱しないものは、すでにして芸術ではない。誠実さを以て逸脱した本作は、まさに後世に残る芸術だと思う。観るものに「静かな違和感」を残す。この絵、何度か来日しているようですが、またいつか来ないかな?