今回はちょっと趣向を変えて、時事問題でいこうと思う。さる9日(水)に、アメリカ大統領選での大番狂わせがあった。私はてっきりヒラリー・クリントンが勝つのだと思っていた。そして凡庸な感じで、玉座の継承が執り行われるんだろうと想像していた。でも勝ったのは、トランプ氏だった。このことを、私は仕事帰りのiPhoneで知り「えらいこっちゃ~」と独りごちた。
私は社会派の人間ではありません。現代アメリカにも、政治にも疎い。でもひとこと言わせてもらうとすると、メディア、世論調査、それらがアメリカ国民の「こころ」や「方向性」を、まったく読めていなかったこと。これに大変おどろいた。そしてこの奇異な選挙結果が何を意味し、アメリカはこの後、どのように動いていくのだろう? ひいては、世界は、日本は、どのように動いていくのだろう?
アメリカ国民に通底する感情なんて、私は知らない。ただ、これは想像だけど、ヒラリーは結局のところ「予定調和」だったんじゃないかって。国民が満足なら、予定調和でぜんぜん行ける。でも・・国民が「流れが変わってほしい」と思っているなら、予定調和にまさる悪夢はないわけです。オバマのスローガンだって「チェンジ」だった。でもアメリカ国民がオバマの八年間で「本当に生活が変わった」と思っているか? いや、思ってないから、ヒラリーが負けたということね。今回の衝撃は、アメリカ国民の閉塞、怒り、鬱憤を感じさせる。逆にトランプは、その「通底する感情」を直感で掴んでいた。
マイケル・ムーアという映画人(というか、社会活動家)が、トランプの勝利を予測していた。「5 REASONS WHY TRUMP WILL WIN」という文章を、夏頃?に書いている。これを読む上で大事なことは、マイケルはトランプの支持者ではないということ。「トランプ大統領」は悪夢だけど「客観的に分析して、そうなっちゃうよ」ということね。マイケルという巨漢のインテリおやじ。私はこの人のことを「本当の意味でのインテリ」だと思っている。つまり極めて行動派であり、「リアルな知」を勝ち取るために身を削れる人なんだな。トランプが勝利した今、彼は反トランプデモに参加する。曰く「あんなナルシストは、自分の天下になればますます自分に酔うだろう。奴は必ず、たぶん無意識に法を犯す。何が自分にとって最善かということしか考えていないからだ」ずばり「トランプは任期4年を全うできない」と予言している。
トランプは大統領選において、ヒラリー・クリントンよりも上手く立ち回った。それは認める。しかしひとつ重大な「瑕疵」を残したことは否めない。それは「ヘイト」という誉められないやり口で、国民を煽ったこと。「人種のるつぼ」といわれるアメリカ合衆国で、ヘイトがちゃんとコントロールされなくなったら? その時は「アメリカの死」がやってくるかもしれない。アメリカの底力とは、その多様性をつつむ寛容性、開放性にあるはず。ヘイトを許すようになれば、自由の女神はおいおい泣くだろうよ。
アメリカは、世界は、そして日本は、これから一体どうなるんだろう? 今回の「事件」は、政治に無関心な私にも、ちょっとショックだった。現状、ヘイトクライム(人種差別と偏見に基づく攻撃)は、アメリカ各地で実際に増えているという。トランプは「ヘイトクライムはやめるんだ」と訴えているが、それが「後の祭り」とならないように祈るのみである。メディアという扇情的な幽霊は、ヘイトというはけ口をアメリカ国民に与えようとしている。閉塞、怒り、鬱憤にもがいている人民が、その「はけ口」を一気に使用したら? それは大変に恐ろしいことだと言うしかない。人間の心の裏側でくすぶるグロテスクな暴力性、そしてお決まりの「負の連鎖」を甘く見てはいけない。それは十分に歴史が語っている。以上、時事的な文章をこしらえてみました。