近況・・にかいめのふれんち

近況、ひとつ行きます。息子が11月9日から約一週間、研修旅行だった。つまり夫婦水入らずというわけ。こうした場合、嫁が一番よろこぶのは外での食事である。なので私は10月の中旬に俊敏に動いた。夏に栗東市内のフレンチで、初めてコース料理を食べて「しばらくフレンチ巡りしてみるか?」みたいな野望を抱いていた。今回は時間がたっぷりあるので、京都の店をリサーチ。こうした時に役に立つのが「食べログ」なんだよね。やっぱ、これに頼っちゃう。そこでコスパに優れて、評価が高かったのが「コムシコムサ」。この店、相当に人気があるらしく、予約可能な日がどんどん埋まっていく。Webでみて「ええ~?」という感じで、ちょっと焦って11月14日(金)の19時に予約を入れる。メニューは「おまかせコース(税込8100円)」のみ。気さくそうなマダムに「苦手なものなどないですか?」と訊かれるが、「特にない」と応える。嫁は肉がやや苦手なのだが、まあ行けるだろう。予約のことは、直前まで伏せておくことにした。

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さて、当日。二人して京都の東山へ。夫婦でちょっと遠出、というのも乙なものだ。店は東山二条を少し西に入ったところ。ちょっと気後れするが、えいや!っと玄関の扉を開く。最初はかなり緊張していたと思う。写真撮影用のiPod Touchを落としてしまい、写真はあきらめることに。この記事に使われている写真は、全てWebから拾ってきたものです。あしからず。この緊張を解きほぐしてくれたのが、マダムの対応。電話対応で「飾らない感じ」との印象だったが、まさにそんな感じ。給仕の腕前はもちろんプロなのだが、ちょっとしたおしゃべりが気遣いを感じさせる。この痩身のマダムが発する不思議なオーラは、やっぱ年輪じゃないかと。上品で機敏で、しかも温かい。


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前菜は四種。ひとつめは「蟹とホタテのエフィロシェ」。まず見た目で楽しめる。ズッキーニの薄切りで蟹とホタテの実を巻いてある。フレンチの初めの皿って、大体こんな感じなのかな。淡い味付けで、さっぱりと。

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ふたつめは「ポルチーニのスープ」。ポアレした魚(確か鱧だったか?)が、ポルチーニのスープに浮かんでいる。このきのこ、私は知らなかった。嫁がきのこ好きで、ポルチーニの詳細を教えてくれた。とにかく、ポルチーニである。こりゃ、うめーわ。つけ合わせのパンが、これまた美味い。巧妙に焼かれているというか、外はサクッとして中はしっとり。夏の「ル・ゴーシュ・セキ」のパンも美味い!と思ったけど、上には上がいるな。スープにつけて食うと、たまらん。

みっつめは「フォアグラのポアレ」。ソテーしたフォアグラの下に、コンソメでさっと煮込んだ大根(写真はかぶら)が敷いてある。バルサミコソースで。個人的に、夏の「フォアグラとイチジクのキャラメリゼ」ほどのインパクトはなかったけど、とても分かりやすい一品と思った。この店は、ソテーしたフォ150x150_square_3704684アグラと野菜をコンビで供することが、わりと多いみたい。大根はちゃんと食感を残してあって、フォアグラとの対比を楽しめるようになっている。

よっつめは「鱈(だったか?)蛤のリゾット添え かぶらのソース」。ムール貝が添えられている。何といっても、かぶらのソースが素晴らしい。優しくて、ちょっとまったり感がある。鱈の上に添えられた「おこげ」が、カリカリ感を演出している。ソース、うまいね~

次にメイン肉料理。牛とジビエ(鹿と鳩)から選べる。私は鹿を、嫁は牛をたのんだ。私のなかで鹿肉というのは、独特のくせがあって、鉄臭くて・・みたいなイメージだった。当然のことながら、供された150x150_square_12177644鹿肉はまったくそんなのなくて、思わず唸ってしまった。これも夏のフレンチとは違う点。あのときは鴨だったけど、それほど肉自体は感心しなかった。今回は、肉がちゃんと美味い。ほどよくソリッドで柔らかくて、旨みもあり、ジューシー。甘めのソースがよく合います。

あとは一口の代わりごはんかチーズ盛り合わせ。嫁は牛しぐれ茶漬け。ほうじ茶の香りを愉しむ。和で〆っていうのも乙なもんですな。私はチーズだったけど、これは呑みの人がオーダーすべきだと思う。ワイン片手に、いろんなチーズを愉しむのがいいと思う。呑まないおいらは、お茶漬け頼んだらよかった・・f(^^;)

デザートもみっつから選べる。この店は、こうした選択肢が多いのがいいね。エスプレッソで、一息。お腹いっぱい。パンは結局みっつ食べた。

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「コムシコムサ」を一言で表すとしたら、それは「誠実」だと思う。シェフはとにかく「寡黙な漢」という感じ。職人を思わせる風情だけど、じっさいにその仕事ぶりは堅実で期待を裏切らない。逆に言うと「芸術は爆発だ」的な部分は、やや物足らないのかもしれない。でも、税込8100円という価格で、これだけの料理、サービスを供してくれる店って、なかなかないと思うのね。サービス! マダムはご主人と対極的なキャラ。きほん陽気だけど「マダム」という役割を決して逸脱しない。あの人、そうとうに賢いよ。お客の緊張を解きほぐし、笑顔をふりまく。あの会話術は、やっぱ年輪なのかなぁ。私たちも初めは緊張していたけど、このマダムのいい意味でくだけた対応で、すぐにリラックスできた。ご夫婦で、すばらしい時間と空間を創り出されていると感じた。いやいや、参りました。また来よう。ありがとう、コムシコムサ。