二人のジャズ・ピアニスト

YouTubeを語るコーナー! 今回は「大好きなジャズ・ピアノ演奏」をネタに、まるちょうなりに語ってみたい。Bill EvansとKeith Jarrettの入魂のソロ演奏を取り上げる。

まずはBill Evansから。まるちょうは、ジャズの理論とか細かい事は解らないけど、この人の演奏は、なんか心が震えるというか。あるいは、しっくり来るというか。作家で言うと村上春樹くらい、自分にとっては重要な人物です。彼は1980年に51歳の若さでこの世を去った。もう30年も前の事だ。晩年は髭ぼうぼうだったけど、60年代は頭髪にべったりとポマードを付けて、きりりとオールバック。次の映像は、まさにその頃のもの。曲目は「My Foolish Heart」。



この独特の猫背が「自分の演奏に強烈に入り込んでいる」という印象を与える。まるちょうは別の演奏のDVDも持っているのだが、それはこれほど頭を傾けていない。この映像の「猫背」はただ事でないと思う。まさに「自己への沈潜」という言葉が相応しいだろう。自分の演奏の中で陶酔しながらも、ちゃんと演奏自体は神がかり的にコントロールしている、みたいな。でも、この「ただ事でない猫背」には、なんか麻薬の匂いが漂っているような気もするんだけど。Wikiによると、ヘロインを常習していたという記述がある。そうした要因もあるのかなぁ、と思ったりする。ただ、彼の場合麻薬を快楽のためだけに使用したわけではないことは確かだと思うんだけど。おそらく、全てはよりよい演奏を生みだすため、強烈な上昇志向があったと推察する。たとえ、それが自分の寿命を短くする事になったとしても。「太く短く生きる」彼の人生は、まさにそういう生き方だったのかもしれない。

次にKeith Jarrettについて語る。この人の演奏もめちゃ好きで、お蝶夫人♪とコンサートに行ったほどだ。彼は現在63歳。ジャンルを超えて、いろんなアプローチで演奏する。小難しいのもやるし、とても素直で解り易いのもやる。要するに変幻自在なのだ。しかし、その核となるものは、強烈な熱情だろうと思う。中腰になったり、うめき声を発しながら演奏する様は、内に秘めた絶大なるエネルギーを想像させる。次の映像は1984年の「Over The Rainbow」。



まるちょうは、この映像を見て、少し涙ぐんでしまった。何が彼をして、ここまで「音楽」にのめり込ませるのか。ひとつの音も軽んじないというか、見ていると、なんというか、息をのんでしまう。各々の「音」に心の底から魂を吹き込んでいるかの如くである。まるちょうの思うに、この強烈な「音への傾倒」は、一種の「狂気」を孕んでいるのではないか。それほど、彼の姿勢は常軌を逸している様にみえる。

Wikiによると、90年代後半から、慢性疲労症候群により活動を中断していたらしい。2000年頃から、少しずつ活動を再開したとの事。お蝶夫人♪とコンサートに行ったのは、2002年だったが、これほどの「狂気」は感じなかった。おそらく、それが「体に悪い」という自覚を持ったんじゃないか? この映像のような「狂気」のこもった演奏ばかりでは、それは病気になるだろう。少なくとも長生きはできまい。Keith、すり減ってるなぁ、と思うもん。でもそれが、彼一流の誠意であり、真実であり、理想なんだと思う。こうした人は、ほんまに長生きして欲しいと思います。人類の宝だね。

以上、YouTubeで二人の敬愛するジャズ・ピアニストを語りました。