健康的とデカダン

「村上さんのQ&A」のコーナー! 今回も「そうだ、村上さんに聞いてみよう」から、質疑応答を抜粋して考察してみる。

<質問>ムラカミさんは朝5時に起きて、まずジョギング10キロ、家に帰って洗面器いっぱいのサラダをかっこみ、もくもくと午前中仕事をこなし、お昼を食べがてらジムにおもむきプールで5キロ泳ぎ、家に帰ってちょっとペースダウンしながら残りの仕事を片付けて、夕暮れをビールかさっぱりとした白ワインで迎え、夜9時には寝る生活をしていると、ムラカミファンの妹が断言していました。真相はどのようなものなのでしょうか。


<村上さんの回答>ほぼ真実ですが、いくつか細部で誤解があります。だいたい朝の5時くらいに起きて、せっせと仕事をします。主に午前中に仕事をするのです。途中で一時間くらい走るか、あるいは昼前にプールに行きます。最近はだいたい週に3日くらい泳ぎ、3日くらい走ります。走る距離は約10キロ、泳ぐ距離はだいたい1500mくらいです。それ以外には、スカッシュと自転車をやります。午後にも仕事を少ししますが、吸血鬼ではないので、日が暮れるとぜったいに働きません。夕方にビールを1本飲み、そのあと少しワインかウィスキーを飲み、夜は音楽を聴くか、本を読むか、ビデオを見るかです。テレビはまず見ません。寝るのはだいたい10時頃です。8時半に寝ちゃうこともたまにあります。サラダはバケツいっぱいくらい食べます。アイロンもかけるし、料理も作ります。結婚していますが、一人で食事をするのが好きです。小説家にもいろいろなタイプがあります。妹さんによろしく。

<まるちょうの考察>村上さん、恐ろしく健康的な生活である。ひとことで言うと「生産的」という言葉になるだろうか。例えば太宰を代表とする「無頼派」なんかと比べると、ほとんど対極的と言っていい。デカダンの反対。

まるちょうは、25歳までは結構デカダン的な生き方をしていた。いわゆる「自己破滅的」というか。破滅願望はどこかにあったと思う。いい加減消耗しているのに、阿呆のように微笑んでいる、そういった若者だった。ある意味、自虐的だったと言える。23歳のときに失恋をして、自分を否定されるような感じがして、自分の生き方を考え直した。

今は基本的に村上さんの生き方に賛成です。人生は健康的で建設的で生産的なのがよい。退廃からは、一瞬の奇跡が生まれるかもしれないが、それはあくまでも一瞬である。正しい生き方は、村上さんのように「少しずつ無理をせずこつこつ積み重ねる」ことだと思う。ニーチェ的には、永遠に結びつくのは後者である。

村上さんの運動量にははるかにかなわないけど、まるちょうも可能な限りフィジカルでありたいと思っている。普段の労働が椅子にずっと座ってばかりなので、バランスをとる必要があるのだ。その辺は、村上さんとよく似ている。羨ましいのは、アルコールを楽しめること。まるちょうは飲めないので、いいなぁと思う。

デカダンは青春なら許される。でも大人たるもの、ムラカミ的でなければどうする。自分が無限でないことを、しかと受け止めて生きるのがムラカミ的だと思う。消耗して、ただ阿呆のように微笑むのではなく、ちゃんとネジを巻いて生きること。不完全な自分だからこそ、今日も明日もネジをしっかり巻いて生きて行こう。

以上、村上さんのQ&Aのコーナーでした。