Steve Jobsのスピーチ(3)

スティーブ・ジョブズのスピーチ、最終回。今回は#3の「死」について。スティーブはスピーチの一年前に膵臓癌と診断されたが、検査の結果、手術可能なタイプと判明。一命を取り留めた。スティーブは運が良かった。普通はがんの宣告をされたら、そうそう長くは生きていけない。この体験をもとに生じた意識変革を述べている。

「死を意識することは、人生において大きな決断をする価値基準となる最も大切なことです」「外部からの期待、プライド、恥や失敗の恐れなどは、死によって一切なくなるのです。あなたが死を意識することが、失うことを恐れない最良の方法なのです」「死は生における最も優れた創造物です。それは生に変化を起こして古きものを消して、新しきものへと道をつくる」等々。

だから、まるちょうは思うのです。できるだけ早くから「死を意識して」生きるべきなのだと。本当に自分の死に直面してから、人生を考え直すのでは遅い。もったいない。「自分がいつか必ず死ぬという事実」に基づいて、早くから人生を考えることが大事なんだと思う。

村上春樹は「ノルウェイの森」の中で「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」という有名なフレーズを残したけど、スティーブがこのスピーチの中で訴える事柄は、このフレーズと大いに関連があると思う。死は健康な体の奥底にひっそりと潜んでいる。そして多くの人は、それに気付かない。あるいは気付こうとしない。

「死を意識する」というのは、一種のショック療法である。叩きのめされるような出来事があって、初めて分かる。だから「死を意識しなさい」と言われても、普通の人は理解できないだろう。近親の死、大病の経験、命に関わる大けが等々が、そういった意識変革をもたらし得ると思う。誰もが辛い経験を通じて「死」を身近に感じ始めるのだ。

スティーブは続けてこう述べている。

他人の意見というノイズによって、あなた自身の内なる声、心、直感をかき消されないようにしなさい。最も大事なのは、あなた自身の心や直感に従う勇気を持つことです。そういう内なる声、心、直感は、どういうわけか、あなたが本当に何になりたいか既に知っているのです。

ひとことで言うと「しっかり自分の人生を生きなさい。無駄に誰かの人生を生きないこと」だろう。実際には、しがらみとか弱気とか雑念とか、いろんな邪魔する要因がある。でも、自分の臨終に際して「自分の人生はこれでよかった」と思える生き方をしたい。本当に難しいことだけど。

最後の決め科白・・「Stay hungry, stay foolish」(ハングリーであれ、愚かであれ)というのは、死ぬほど好きな言葉。これでスピーチを完了されると、ホントしびれる。この言葉は、実は若者ではなく年をとるごとに重みを増す言葉のように思える。心の中で呪文のようにつぶやきながら、これからも年を重ねたいと思うのでした。

以上、三回にわたりスティーブ・ジョブズのスピーチをネタに語りました。