羽生善治

久々に、この人を語るコーナー! 先日「プロフェッショナル仕事の流儀 棋士・羽生善治」をDVDで観たので、羽生善治という人に関して語ってみたい。まるちょうが羽生さんに直接(というか間接だが)お世話になっているのは、名著「羽生の頭脳」という定跡書である。将棋をやる人ならこの本を読んで、羽生さんの思考という作業の中の、特に「簡潔さ」を感じることができると思う。ポリシーが明瞭で、絶対に冗長にならない語り口は、発行から16年経過した今も読者を惹き付けてやまない。ひとことで言うと「センスが良い」ということになる。もちろん、将棋における数々の偉業もあるのだけど、それ以前に一人の人間として尊敬したいなぁ・・と常々思っていた。そんな中「仕事の流儀」というシリーズに羽生さんが登場したので、思わずDVDを購入。改めて当代随一の大棋士の面影を垣間みれたようで、嬉しくなった。


一番感じたのは、羽生さんほどの大棋士でも「苦悩」と無縁ではないのだなぁ、ということ。1996年(26歳)に七冠全て制覇して頂点に上り詰めた後の「これから自分はどこへ向かうのだろう?」という茫漠とした不安感。しかし、そこからしっかりとシフト・チェンジして、現在38歳という年齢に相応した将棋の指し方を模索する様子がうかがえた。

羽生さんの主たる思想は「才能とは、努力を継続できる力」という認識である。これってまるちょうが常々思っていたことだったので、かえってびっくりした。勝つだけではなく、生涯をかけて己の将棋を究めること。そのために情熱を日常の中で淡々と持ち続けること。「情熱を淡々と持つ」・・これキモね。そうでないと、責任のある仕事はまずできない。こういう姿勢が確固としてあれば、例えばちょっとしたミスをしても冷静に対処できるだろう。

羽生さん自身、96年以前は「人生は階段を駆け上るようなもの」というイメージだったに違いない。そうして頂点を極めた後、その思想ではうまく行かないことを実感したのではないか。ただ、26歳になるまで「人生を上昇志向の中で捉える」人って、やはりすごい資質に恵まれた人なんだと思うけど。それまで息切れをしないということだからね。同じ歳に結婚して家庭を持ったことも、大きかったに違いない。人生は「孤高」だけでは生きられない。おそらく結婚は、それを教えてくれただろう。

羽生善治の考えるプロフェッショナルとは?→「本当に大事にしているものを守り続けている、信じ続けているということではないかなあと思います」とのこと。つまり自分の中に、しっかりとした「核」「信念」「誇り」があって、それが揺らぎない人。これは、まるちょうの理想に他ならない。実際には揺らいでばかりだし、理想にはほど遠いんだけど、心の中は羽生さんのおっしゃることと同じです。山のように泰然と生きたい、ホントに。

最後に、対局中の心構えとして「玲瓏」という言葉を教えられた。玲瓏(れいろう)→澄み切って曇りのない様。雑念のないこと。つまり、優勢に酔って楽観しすぎたり、変に局勢を悲観してせっかくの勝ち筋を逃したり、そのようなことが無いように、常に精神をニュートラルに保つこと。数年後にはネット将棋を再開するつもりなので、しかと肝に銘じたいと思ったのでした。「玲瓏」という言葉は、人生のあらゆる局面に通じる、よい言葉だと思う。

羽生さんという人は将棋自体も強いんだけど、その人格自体が尊敬できる。その率直さ、簡潔さ、素直さに、まるちょうは大いに共感を覚える。これからも尊敬する人として、見守っていきたいと思います。