東京ラブストーリー

「東京ラブストーリー」(柴門ふみ著)を再読した。柴門ふみは、まるちょうの大好きな漫画作家で、この作品は学生の時に読んで以来。なぜ今読み直したかというと、「赤名リカ」という登場人物に興味があったからだ。思うに、この赤名リカというスパイスがなければ、この作品はそんなに成功しなかっただろう。そんなわけで、ここでは彼女のキャラをプロファイリングしてみたい。

読後、彼女のキャラについて考えたとき、すごい矛盾をはらんでいることに気づいた。ひとことで言うと「愛がなければ不安定で困るが、愛されて束縛されそうになると、もっと不安になる」ということ。彼女の心には、ふたつの場所が刻み込まれている。11歳まで育ったアフリカのジンバブエと東京である。自己を抑制するのが下手で、喜怒哀楽がストレートで、自分の欲望に忠実なキャラ・・これはつまり「東京」。その一方で、とても純粋で自由を渇望するキャラ・・これはつまり「アフリカ」。このふたつのミックスが、リカなのです。相手を傷つけながらも愛を求めるのは「東京」であり、束縛から自由に羽ばたこうとするのは「アフリカ」。この自己矛盾は、ほとんど絶望的だ。不幸になるために生きているようなものだ。

実は、この「東京」的な性格は、まるちょうの最も苦手なものです。というのも、私は「来るもの拒まず」的なところがあるから。ずけずけと侵入されて、いいように振り回されて、ボロボロになってしまう。主人公の完治と、よく似た性格やね。完治もリカと辛抱強く付き合ったけど、結局精神的に追い込まれて愛は終わる。この完治と同級生のさとみが結局結びついて、めでたしめでたしとなるんだけど、この二人の心は「愛媛」にある。つまり、故郷ですね。とても穏やかで心の落ち着くイメージ。二人はまさに似たもの同士で、妥当なエンディングだったと思う。そうそう、まるちょうも、めっちゃ「愛媛」的です。嫌になるほどね。「東京」にはなれない。

一番象徴的なのは、リカと完治の別れの場面。「東京」的な側面からは、リカはストーカーになりやすいタイプである。しかし、実に潔く爽やかに別れを演じるんだね、これが。この爽やかさは、まさに「アフリカ」なのです。ホントに憎めない。「東京」的で、ひどいところもたくさんあるけど、ここという時は、サッパリしている。このへんの落差が、彼女の魅力です。

完治の高校時代の同級生アズサは、激しくて誰にも理解されない孤独な性質を持った女の子で、当時いろんな男の子と関係を持ちながら、自殺していた。そう、彼女もリカと同様に「東京」的な部分を持った女性だった。しかし、ひとつ決定的に違う点がある。アズサは自殺したけど、リカは完治との別れの際に「とことん生きてやる」と決然と言う。これ、これですよ。現実ではほとんどあり得ないと思われるような、この潔さ、勇気が、本作品を大いに引き締めていると思う。

次の柴門作品は「あすなろ白書」を予定しています。リカと同様「掛居保」に興味があるのだ。またいつか読んだら、Blogに書きますのでよろしくです♪