Sting(後編)

9/21に引き続き、Stingについて語ってみる。

まず「Fragile

これはデビューから約10年経過して、ソロで発表された作品。これはちょっと聴いただけでは目立たない曲だけど、その歌詞はかなり深い内容を含んでいる。

生身の体に鋼の刃が突き刺さり

流れた血が夕陽に染まって乾いていく時

明日にでも雨が降れば血痕は洗い流される

だけどぼくらの心を襲ったものはいつまでも消え去りはしない

(中川五郎氏対訳より)



StingがFragileを書いたきっかけは、ある米国人の死だったという説がある。27歳のエンジニア、Ben Linder。関連するBlogはこちら。英語版はこちら。正確な真偽は分からない。すいません。しかし、もしこのような理不尽な事件が背景にあるとすれば、とてもメッセージ性の強い曲ということになるだろう。「暴力からは何も生まれない、決して何も・・」と訴える。

On and on the rain will say

How fragile we are how fragile we are
ほんと、人間なんて「fragile(=こわれもの)」である。無分別な暴力により、あっけなく壊れてしまう。その哀しいはかなさを、よく表現している作品だと思う。そして、あらゆる暴力に対する静かなプロテストが本作の主眼だろう。

蛇足だけど、ふたつ本作のカヴァーを紹介しておく。村治佳織Take6。クラシックとゴスペルのいわば両極端なカヴァーで、面白い。でもTake6は、あまりにもfunkyすぎるね。

次に「Shape Of My Heart

これは、言わずと知れた1994年の映画「Leon」(Luc Besson監督)のエンディングで流れる曲である。今でも鮮明に覚えている。殺し屋レオンに救われた孤独な少女マチルダが、彼の壮絶な死後、彼の部屋にあった観葉植物を見知らぬ学校の校庭の一角に植える。

「レオン、もうあなたは根無し草じゃないのよ」
私の記憶が確かならば、この直後に「Shape Of My Heart」が流れ始める。この映画のなんとも言えない「痛いほど孤独で純粋な」雰囲気と、神業的にマッチしていて、しばらくエンディングロールを呆然と眺めていた記憶がある。

I know that the spades are the swords of a soldier

I know that the clubs are weapons of war

I know that diamonds mean money for this art

But that’s not the shape of my heart
「名誉」とか「力」とか「カネ」なんかのために生きてるんじゃない。これはまさに、主人公レオンの心を代弁している。スペードでもクラブでもダイアでもない、ハート(=心や愛)こそが自分の心の形だということ。Stingのボーカルももちろんよいが、間奏のハーモニカがシブすぎ!(>_<) 映画が終わってから、この楽曲を探しに街を彷徨ったのは言うまでもない。

最後に「Always On Your Side

昨年リリースの新しい曲。StingとSheryl Crowの美しくて切ないデュオ。Stingに関するBlogを書こうと思ったのは、この曲を偶然耳にしたことが大きい。これ、おそらく作ったのはSherylなんだろうな。でも、Stingが目一杯感情移入してSherylを時に強く、時に優しくアシストしている。それにしても、Stingの年輪を感じさせる渋さは特筆に値する。ずばり、一聴の価値ありです♪

歌詞を自分なりに訳したけど、かなり難解。大まかに言うと、

「愛って、つかみどころが無くて、はっきりしたものではない。

追いかけると飛び去る蝶みたい。私は置き去りで途方に暮れる。

でも、いつでも私はあなたのそばにいたんだと分かる日が来るわ」
これって男性の世界観じゃないよね。やっぱSheryl作だな。悪く言えば「売れ線狙い」なんだけど・・でもいいもんはいいよ。ハートをがっちり掴む力を、この曲は持っていると思う。

さて、二回にわたりStingを語ったわけだけど、何となく心のどこかに引っかかっていた事柄が、調べるにつれて明らかになったりして、しんどいけど楽しいひとときだった。Stingを神格化するつもりは毛頭無い。でも彼はよい年のとり方をしていると思う。あんな風な55歳になれたらよいな~、なんて思ったりしました(^^)。