近況をみっつ記します。
ひとつめ。「京都医報」という医師会の雑誌に、私のエッセイが載った。これ、自分の中ではちょっとしたブレイクスルーなんですわ。なんたって「やさぐれ総合内科医」ですからね。実質フリーランスだし、学会には行ったことほぼなし、論文も書いたことなし、もちろん研究もしたことなし。こんな「なんちゃって医者」が京都府医師会館の前に立ったりすると、目がくらみますわ。産業医関連で医師会館行くことはありますが、不安でそわそわしっぱなし。こんな私が医師会館の門をくぐっていいのか?みたいなね。
いっときは医師会も退会してさっぱりしようかと、考えたこともあります。でもそのときは家内に止められました。だって私ときたら、学会なんてどこにも入っていないし、せめて医師会くらいは入っておいてよ、というわけです。そうじゃないと、あなたは世捨て人みたいになっちゃうよ、と諭されました。ま、その頃は確かに世捨て人みたいなもんでした。今でこそT診療所の会議に出席させていただくなど、ちょっと社会とのつながりも出てきましたが。ずっと医師会の一員という意識は薄かったわけです。
転機は昨年の「新春随想」です。48歳の年男ということで、文章を載せていただける。正直「おお~」と思いましたね。この20年のサマリーみたいなのを書けたらと思い、頑張って書きました。メディアというのは、すごいと思いましたね。意外な人から、ちょっと声を掛けられたりする。しゃべりではダメな私でも、文章なら通用するんじゃないか。京都医報で文章の投稿を募集されているのを見て「これはちょっと頑張ってみようかな」と思ったんです。
いうてもBlogをかれこれ10年以上書いています。文章の作成については、いちおう一家言あるつもりです。まったくのゼロからではなく、そうとう昔のBlogを下敷きにして、全面的に書き直しました。ま、そのへんの作業は手慣れたものです。週イチのBlogを一回おやすみして、出来上がりました。
自分の文章が医師会の雑誌に載るということは、紛れもなく「発信」なわけです。この「なんちゃって医者」の私が、おこがましくも「発信」とな! ありがたきしあわせなり。ああ、こんな参加の仕方があったんですね。また来年、なにか文章を投稿しようと思っています。
ふたつめ。以前、息子の就活のことを書きました。息子はこの二年間、写真家を夢みて大阪の専門学校で学んできました。三月にいよいよ卒業なのですが、その前に「卒業制作」という難関が立ちはだかります。息子がさんざん苦労してやり終えた「卒業制作展」を、夫婦で今月の8日に見に行ってきました。まず大阪駅近くの学校内のギャラリー。その後、本町にある富士フイルムのギャラリーへ。私は写真のことはほとんど素人だけど、やはり実際に見て感じるものはある。さまざまの才能をじっくりと鑑賞させていただいた。先生から何度もダメ出しを食らって、ときにため息、ときに怒り、大変な思いで制作した卒業制作。お疲れさまでした。存分に堪能いたしました。
その後、嫁がチェックしていた生パスタのイタリアンへ。昼ランチを美味しくいただいた。そして、天満橋近くの息子の新居へ。まだ決まったばかりで何もないけど、一度は場所とか知っておかないとね。日当たりのよい部屋でした。就職一年目の辛さは、オレが一番知っている。グッド・ラック、がんばれ。
最後に、ちょっと気になっていた大阪駅近くの「蔦屋書店」に寄る。ここはしかし、すごいのひと言やね。月曜日の午後にもかかわらず、この集客力はなんや? みんな、仕事してんのか? 店内のスタバでケーキと珈琲をたのんでも、座るところがない! みなさん椅子に長居されるので、ゆっくりできるようでゆっくりできない現状が浮かび上がる。雰囲気を楽しんで、そそくさ帰ってきました。
みっつめ。三月から「カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー作」を読み始める予定です。その時に突き当たるのが「どの訳をよむか?」という問題。古くは岩波書店の米川正夫訳(1957年)。ちょっと前まで定番だった新潮文庫の原卓也訳(1978年)。そして今や波に乗っている感のある光文社の亀山郁夫訳(2006年)。「謎解きシリーズ」でおなじみのロシア文学者、江川卓の訳は、文庫化されていない。江川さんは「罪と罰」で快適に読めたんですが。
さて、米川正夫は論外として、原卓也か亀山郁夫かで迷った。実際に本屋で手に取ってみると、原卓也の訳は字がぎっしりである。息つく暇もないという風情。でも、この方がドスト節に近いんじゃないかと思う。読者にたたみかける感じね。でもいかんせん、私は読みやすい方がいいねん。亀山郁夫の訳は、段落がこまめにあって、読者への配慮がうかがえる。たぶんこれは「もともとない段落」なんだと思いつつも・・ そして全五巻(!)という細分化、かつ後に行くほど本が分厚くなるという細かい配慮。光文社、やりまんな~ Amazonのレビューでみると、わりに評価は二分している。悪い評価をくだす人は、いわばドストエフスキー文学の門番みたいな人たちみたい。そうとうに亀山郁夫をこき下ろしている。とにかく誤訳が多いんだそうだ。それを亀山さんは知らんふりをするという。うーん・・
でも現代に相応しい「新訳」というのは、あっていいとも思う。私はまずは亀山郁夫から入ろうと思う。そして光文社のは、Kindle版というのがある。初めから電子書籍で売っているやつね。以前から文庫本の電子化について考えていた。本をiPadで読むのは、けっこう疲れる。目も腕も。書籍専用のタブレットはあっていいんじゃないか? そして、Kindleを調査。Kindle Paperwhiteが一番売れていることを掴む。ちょっと悩んだ末にポチッと行きました。というわけで、三月からKindleでカラマーゾフ読み始めます。ちょっと楽しみ♪ 以上、近況をみっつ記しました。