お題をきめて語るコーナー! 今回は「惚れっぽさ」について、いろいろ書いてみたい。
最近チェット・ベイカーを聴いている。お気に入りは「I Fall In Love Too Easily」。直訳したら「私はすぐに恋に落ちてしまう」、関西風にすると「わし、惚れっぽいねん」くらいか。とりあえず、その曲を聴いてみて下さい。
I Fall In Love Too Easily/Chet Baker
哀しげで憂鬱そうな曲調には、「また、アホみたいにすぐに恋に落ちてしまった」という自嘲が含まれている。歌詞を拾い上げるついでに、関西おやじ風に訳してみた。
I fall in love too fast
I fall in love too terribly hard
For love to ever last
My heart should be well schooled
‘Cause I’ve been fooled
In the past
But still I fall in love too easily
I fall in love too fast
ころりと恋に落ちてまうわし
早すぎやで
あまりに燃え上がり過ぎて
永くは続かない愛
わしの心には、もっと訓練が必要や
せやかて、これまでずっとアホやったから
でも、まだわしは惚れっぽいまま
早すぎんねん
このうたが一番似合う日本人は誰でしょう! ・・もちろん「フーテンの寅さん」その人である。日本各地を旅しながら、いろんな女性に恋してふられて・・ お決まりのパターンなんだけど、映画「男はつらいよ」シリーズは全部で48作にのぼる。ちゃんとギネス認定もされている。それだけ民衆に支持されたのは何故か? 根本は寅さんの「惚れっぽさ」だと思うんだよね。
では「惚れっぽさ」って何よ? 一番のキーワードは上記歌詞の「well schooled」である。「school」という動詞は、「~を仕込む」「~を訓練する」「修養を積む」などの意。そう、しっかり心を「訓練」したら、恋に落ちることなんてない。でもその「訓練」って何よ? そんな訓練、必要け? 愚かだから、恋してしまう。しかし民衆は、その寅さんの「愚かさ」をこそ、愛したのだ。愚かさを「弱さ」「不完全さ」と言い換えてもいいだろう。まるちょうは「well schooled」という言葉に、敵意を持ってしまう。人生、愚かでいいじゃないの。
例の村上さんのエルサレム賞スピーチでの「壁と卵」というメタファーを思い出してほしい。「壁」は恋に落ちない。落ちないことを名誉とさえしている。そして、強くて完全である。それに対して「卵」は、惚れっぽい。愚かで弱い。すぐに割れちゃう。卵の代表が「寅さん」だったんだね。まるちょうは、寅さんが大好きです。「惚れっぽさ」って、人間らしさそのものじゃないの? 人間年を取るにつれ「スキをなくしたい」だの「完全無欠になりたい」だの思いがちだけど、うかつにも恋に落ちるくらいの「心のスキ」がある人のほうが、若々しく生きられそうな気がします。つまり「well schooled」された人のほうが、老化は早いと思う。「壁」は完全なようで、すぐに形骸化し腐敗するから。「卵」は敗者みたいだけど、そうではない。その弱さ愚かさを持ち続けることが出来れば、最後に勝つのは「卵」だと信じます。
最後に、ビル・エバンスの名演でしめくくる。ボーカルなしだけど、存分に味わえます。うっかり(笑)恋に落ちちゃった時、ぜひぜひ聴いてみて下さい。きっと癒されるはずです(^_^)。
I Fall In Love Too Easily/Bill Evans
うっかり恋に落ちちゃわないでね・・・(-_-;)
根がうっかり八兵衛なだけに・・f(^^;)
大丈夫っす!ヽ( ̄▽ ̄)ノ