慢性的な便通異常を訴える「謎な」症例(まるちょう診療録より)

年齢よりずっと若く見える80代男性。昨年12月ごろから下痢〜軟便がつづく。一日一回ある。お腹がゴロゴロする。血便なし。12月27日にアドソルビンとミヤBMを処方されるも、ぜんぜん効かない。熱なし。もともとの便は普通〜硬め。止瀉剤で止まらない下痢は、大腸癌か細菌性腸炎を疑う。便潜血と便培養をオーダー。


便潜血は陰性。便培養から大腸菌が検出された。つまり、大腸菌性腸炎である。LVFXにて対応。一件落着と思いきや? 10日後に再診され、下痢はないが、硬いのや軟らかいのや、いろいろと。もともとは一日一回太いのが出ていたとおっしゃる。過去のカルテを探ると、二年前にCFをされていて、上行結腸に5mmのポリープ指摘ある。CFはしておくべきか。大腸癌の見落としは一番こまる。

結局、C病院に入院でGFとCFと腹部造影CTを実施。悪性所見なし。便培養も行われたが、陰性。C病院の先生はIBSとしてポルフルやイリボー、ラックビーなど処方あり。便通は便秘と軟便の交代がつづく。3月に当科受診され、イリボーは便秘になるのでラックビーとポリフルで様子みることに。4月、やはり軟便つづく。ラックビー倍量としてみる。ポルフルは止める方針で。5月、軟便と便秘を繰り返す。ラックビーは効かない、ポリフルは便秘になる。ヨーグルトと納豆は摂取している。ラックビーをミヤBMに変えてみる。7月、やっぱり同じ。

本人様に、訊いてみる。神経質なほうか? 心配性か? 不安を感じやすいか? 最近、ストレスなことはあるのか? 確かにちょっと細かい方だと思うが、ストレスは全くないと。話し方も、ちょっと声大きめで、冒頭に書いたように「若々しい」のである。これはIBSじゃない? 大腸菌の再感染では? ☞ 便培養を再チェック。


出ました、大腸菌。大腸菌性腸炎ふたたび。LVFXで除菌。7月末、下痢はマシで軟便。ミヤBMは悪い印象あり、ラックビー希望。9月便が軟便になってきた。下痢も少し。10月、軟便が多い、普通便もあり。便培養、もう一度やっておきますか? まさかと思うが、本人さま同意あり。
☞ 大腸菌検出。清潔にしていますか? 奥様と二人暮らし。清潔に生活していると。LVFXで対応。なぜだろう?

ひとつは、LVFX耐性の大腸菌の可能性。今、調べ中。もうひとつ、気になる情報あり。10月下旬に、当院健診科を受診。ややご立腹。要するに健診の便検査をめぐる健診科の対応にご不満あり。ただし、よく調べてみると、9月26日に「大腸ファイバー、自分と嫁さん、そろそろせなあかん。また先生に相談するわ」と話されていて、今回の便検査は要らないとおっしゃっていた。つまり、一ヶ月前の自分の発言を失念されている。あるいは話の中身が変わっていたり、すり替わっている。したがって、健診スタッフの対応とかみ合わない。

つまり何が言いたいかというと、この方の認知症の可能性である。「清潔に生活している」というのは、取り繕いであって、本当は不潔である可能性。でも〜、、 この方の血圧手帳は、とてもきっちりと細かく記載されているのです。とても認知症では、ああは記録できないと思う。・・謎なんです。三度の大腸菌検出。とりあえず、結論は出ていないのですが「謎な症例」として、ここに記しておきます。