モラトリアムでやっておくべきこと

今月中旬までBlog休止の宣言してましたが、書きかけのBlogに手を加えてたら、完成しちゃったので、アップしちゃいます。あしからず(本格復帰かどうかは、まだわかりません) ☞村上さんのQ&Aのコーナー! また「そうだ、村上さんに聞いてみよう」から質疑応答を抜粋して、まるちょうなりに考えてみる。

<質問>私は大学2年生なのですが、大学がつまらなくてつまらなくて、死ぬほどつまらなくて困っています。授業を受けていると、だんだん腹が立ってくるか、耐えられないほどの喪失感に襲われてくるか、そういうマイナス状態に陥ります。それなのに、隣の友達や、周りの人々は平然と授業を受けていて、みんなが不思議に思えたりします。今はとても中途半端な状態で、しんどい毎日です。春樹さんも大学がつまらなかったと言っていたけれど、その時期、どのように乗り越えたのでしょうか。

<村上さんの回答>大学の授業はたしかに退屈です。気持ちはよくわかります。でもあなたの場合、文面から推察するに、だから大学をやめて何かほかにやりたいことがあるのかというと、どうもそれもないみたいです。僕は学生のとき、ゆくゆく映画の仕事につこうと思っていたので、授業はあまり出ずに、映画をいっぱい見て、図書館に行って古今東西のシナリオを読みあさっていました。アルバイトをし、女の子とデートをし、猫を飼っていました。片端からジャズを聴いて、英語の本を読みまくっていました。そういう経験が、今けっこう役に立っています。

というわけで、大学なんてくだらないと思ったら、とにかく自分がやりたいことを見つけなさい。自分がとくにやりたいこともないのに、「大学は退屈だなあ」とぐちばかり言っているのは、やはりいささか怠慢じゃないかなという気がします。他人から何かが与えられないときは、自分で探しに行くしかありません。ほんとですよ。がんばろう。


<まるちょうの考察>上記の質問と回答は、ほぼ完結している。なので視点を変えて「モラトリアムでやっておくべきこと」について、考えてみます。社会に出るまでにやっておくべきこと・・ もちろん、勉強はある。でもそれだけでは絶対にダメ。いわゆる「社会」も、勉強だけ優秀な人材なんて求めていない。「社会に適合するため」必要なハードルってなんだろう?

まるちょうは、社会に出てからすぐに「こけた」人間です。逆に言えば、モラトリアムの中で何かが足りなかった。それって、なんだろう? 質問者の苦悩って、ホント辛いと思うよ。自分のやっている勉強が「やりたい勉強ではない」という現状。私の場合は、自分で言うのもなんだが、ホントに満たされていた。医学はまさに自分のしたかった勉強だし、実際に「勉強することで心が落ち着いた」とさえ言える。それほどしっくりきていた。実際、試験もそれほど落とすことなく学業を終え、最終的に医師免許を取ることができた。しかし・・結局のところ、それでは足らなかったのである。

ここまで書いてふと思うところあり、村上さんの「螢」という短編を再読した。質問者と同じ年代の「僕」が主人公である。「僕」も大学にそれほど重要性を感じていない。謎めいた「彼女」に振り回され、過去の友人の死を引きずっている。要するに「青春のぐしゃぐしゃ=欠落感や傷」が淡々と書いてあるわけ。これ読んで分かったんだけど、人生って「問いと答えがセットでない」ことって多いでしょ? 難しく言うと「不条理」ということになるか。特に「人間という存在」は、不条理だらけである。巻末に答えが用意されていないのだ。その「答えのない問題集」にぶち当たって、うんうん唸る、悩んでもがいて苦しんで、のたうち回る。それがモラトリアムじゃないかって。「螢」では、そうした対人的な「手の届かなさ」が見事に表現されている。

だから思う。モラトリアムは「答えのない問題」に対する自分のスタイルを定める期間じゃないかって。しっかり対峙するのもよい。殻を作っていったん閉じこもるのもあり。あるいは放っておくのもいいだろう。逃げもひとつだ。そして機が熟したら、踏み込む。大事なのは、この距離感だろう。こうした「間合い」は、教科書には書いていない。自分固有の間合いを見つけるしかないから。こうして試行錯誤して出来上がった「考えるスタイル」は、社会に出てから大きな武器になるのだ。

現代はあまりにも答えを用意しすぎる。ゲームとか受験勉強とか・・ 思考がコンビニになりがち。豊かになったがための罠が多い。「若者よ、恋をしろ」というフレーズは、翻訳すると「面倒くさい人間という対象に興味を持ちなさい」ということだ。まるちょうは、恋をするのが遅すぎたね。「あ、これ何か違う」という違和感を持つのが遅すぎた。唐変木では、人生という「困難で得体の知れないもの」とは戦えません。

最後に。ほとんどの人が自分の青春時代を「満足したもの」なんて、思っちゃいないよ。「何か足らない」からこそ青春なんだ。一番大事なのは、そうした青春時代の「忘れ物」を、その後の人生で取り戻して行くことじゃないかな。うわうわ、綺麗にまとめてしもたわ~(笑) 村上さんのQ&Aのコーナーでした。