妻の手術と入院

お蝶夫人♪が子宮筋腫にて手術しました。手術日は5日。長い一日だった。家族の入院を初めから付き添うのは初めて。良性疾患とはいえ全身麻酔のリスクはあるし、開腹する以上はそれなりのリスクがある。最初は麻酔などの処置込みで三時間くらいと読んでいたのだが、結局三時間半かかった。エピドラがうまく入らなかったようだ。10時にオペ場へ入って、出てきたのが13時半。13時を過ぎてからは、やや不安感も出てきた。頭の中でいろいろ考えている最中に、病棟からのお迎えのストレッチャーが来た。その時は心からホッとした。


私は医師だけど、恥ずかしながら「麻酔から覚めた直後の人」を見た経験がなかった。オペ場から出てきたお蝶夫人♪を観察して、正直とても勉強になった。出てきた直後は目はうつろでまだ生気がない。ひとことふたこと弱々しく喋るけど、あまり聞き取れない。しかし酸素飽和度や脈拍は正常。抜管後の呼吸状態は悪くないようだ。病棟の部屋についてから、次第に目に生気が戻ってくる。体はもちろんほとんど動かないが、口はわりと達者である。鋭い舌鋒(笑)。彼女らしいといえば、そうなのかもしれない。

最初は触れると壊れそうな気がして、手を差し伸べるのも忘れていた。部屋に戻ってしばらくして目がしっかりしてきたので、試しに手を握ってみた。頭の中では触れるだけのつもりだったのだが、彼女はしっかりと握り返してきた。それが嬉しくて、私もしっかり握り返した。とても親密な雰囲気だった。そして、もう大丈夫だなと思った。

執刀の先生は、手術は特に問題なかったと説明した。取り出した子宮は、ひとことで言うと「いかにも取り出すべき代物」という感じ。こんなものが彼女のお腹に入っていたのだと思うと、かなり可哀想に思えた。夫として、日頃からそれほどの認識が無かった。危機意識の無さ。これはいつものことだけど、彼女は辛かっただろうな。ごめんな、お蝶夫人♪よ。ある意味グロテスクに成り果てた子宮を見て、そんな風に感じた。

「あとはナースが全部やってくれるから、みんな帰っていいよ」と彼女は言う。依存心の少ない彼女らしい発言。確かにみんな疲れていたし、実際いても逆にナースの邪魔になるくらいだ。彼女の目に宿る生気と次第にはっきりしてくる言葉を聞いて、我々家族一同は引き揚げることにした。結局のところ、闘うのは彼女自身なのだ。

ところで、私自身は4日から一人暮らしです。ダイゴは祖父母の家に預けている。つまり三人バラバラの状態。でも一夏の体験としては、悪くないんじゃないかと思っている。特にダイゴにとっては、よい勉強になっているんじゃないかな? 私は嫁さんに「To Doまとめシート」を作成していただき、それを元に動いている。「毎日」「時々」「休日」の三枚あり、最低限の事項をコンパクトにまとめてある。よく行き届いていて助かっている。洗濯、ゴミ出し、独りの食事。掃除はあまりしていない。向井万起男さんじゃないけど、男って寂しがりなんだと思う。実感です。

13日に退院予定です。ちょこちょこした術後の症状はあるにせよ、経過はすこぶる良好。昨日、点滴やエピドラのチューブも抜けた。リハの意欲も満タン。問題はないだろうと思う。今回の妻の入院は、私にとってまさに一夏の体験だった。なにより、彼女が元気で戻ってくるのが一番。退院後も、できるだけいたわりたいです。

以上、お蝶夫人♪の手術と入院について書いてみました。