このDVDを観て。「ヒポクラテスたち」(大森一樹監督)を久しぶりに観た。1980年公開のちょい古い映画だ。でも、まるちょうにとっては、とても思い出深い作品なのです。最近、DVDになっていることを知って、アマゾンで購入。八月初旬に夫婦で面白く鑑賞した。
さて、大森一樹監督の紹介を。この人、私と同じ京都の医科大学を卒業している。つまり、医師免許を持った映画監督である。この作品では、大森さんが母校を舞台として(作中では洛北医科大学となっている)、医学部最終学年のモラトリアムの中で揺れる医学生を描いている。
まず、予告編をお楽しみ下さい。本作の雰囲気を感じるのにちょうどよい。>この作品を初めて観たのは、1986年の大学入学時。その頃は、自分の学校が舞台となっているというだけで、あまり深い見方はしていなかった。まぁ、それでも十分面白かったんだけど。今回、あの頃とはひと味違う、やや老練な眼でこの作品を鑑賞して・・やっぱり、よくできた映画だと感じた。これって、大森さんしか撮れない映画だと思うんだよね。だから多分、大森さん自身にとっても、特別な意味合いがあるのではないかと推察する。
プロローグが洒落ている。真っ暗な画面から「分裂病の少女の手記」の朗読。そして、主人公荻野愛作(古尾谷雅人)の夢の中の映像・・夜の解剖実習室を彷徨する自分。もちろん、解剖用のご遺体が、整然と並んでいる。目覚めると、愛作は鴨川の河原に寝ていて、荒神橋でバイク事故があって、足がグチャグチャになっている怪我人がいる。愛作はその人だかりに近寄ってみるも、自分が医学的に何もできないことに気づく。運悪く白衣を持っていることに気づき、おずおずとその群衆から遠ざかる。
とてもよく練られた脚本だと思う。なんか、当時の大森さんの気迫が伝わってくるぞ。昔医学生だった人間には、たまらない語り口だ。臨床実習(ポリクリ)をまわる医学生というのは、本当に中途半端なんです。青春のまっただ中ゆえの傷や劣等感、純粋さも当然持っていて、でも国家試験は目前に控えているから、勉強のプレッシャーは常にある。要するにごった混ぜなんですね。その「ごった混ぜ感」を、極めてリアルに表現したのが本作なのだ。
まるちょうが一番この映画で惹かれる点は、青春の「光と影」である。
医学部に合格して、もうすぐ卒業
(医師へのコースが、ある程度約束されている)
<影>
常に無気力が支配して、レゾン・デートゥルが見つからない
その光と影の対照が、とてもよく表現されている。影のイメージとして、例の「解剖実習室における彷徨」が所々に挿入されており、大森さんの意図が何となく汲める。結局愛作は、自分の彼女の堕胎に関する罪悪感に負けて、統合失調症(分裂病)の患者となる。ここで、冒頭の少女の手記に結びつくわけ。まぁその愛作も、二年後にはちゃんと卒業するわけだけど。
まるちょうのポリクリは・・全く愛作みたいな感じ。内心は使命感を持って真面目に実習を受けたいんだけど、体が動かない。規定の出席をこなしたら、あとは全て欠席。欠席して何をするかというと、寝るかバイト。たったひとつ、真剣に取り組めたことと言えば・・海外の一人旅。中国とかインドとかネパールとか。まぁ、自分で言うのもなんだけど、変なヤツだった。国試の三ヶ月前にネパールで遭難するんだからね(笑)。そういう意味では、大森さんの語る通り「ごった混ぜ」の青春だった(遠い目)。だからこそ、とても共感できる作品です。永久保存版だな(笑)。
以上、思い出深い「ヒポクラテスたち」について語ってみました。
当時劇場へ何度も足を運びました。
足取りも軽やかにやかんの水を足しに去る元気な外科医の図、が唯一笑える印象的な映画でした。
☆SEE YOU!☆
コメントありがとう☆彡
リアルタイムにご覧になっていたのですね。
なんか羨ましいぞ。出演者がみんな若くて面白いです。
高校三年の時、この映画を見て京都に行こうと思いました。今はこの映画に登場する医師たちと鎌倉で仕事をしています。(伊藤蘭が心肺蘇生の見学で失神するシーンです)
柄本明が歌う「ウルトラマンタロウ」、手塚治の赤ちゃんのおしっこの説明、北山修がビートルズとCTの関係をするシーンなど懐かしいですね。そう言えば鈴木清順の病院ドロボウもおかしかったですね。元気のいい外科医は原田芳男のことでしょうか。左翼学生をそれらしく演じた内藤剛志はこのころは無名でした。
「京都そのもの」が、「青春」が、「生と死」が、「医療に関わる使命感と偽善性」が、この監督の特徴である一流の軽やかさでまとめられています。その後、ゴジラなどにまで挑戦していますが、大森監督にとってこの映画を超えるものはまだないのではないでしょうか。
少なくともボクにとっては、とても大切な傑作です。
大変レスが遅くなり、すいません。m(_ _)m
体調が悪かったもので・・
先生、お元気ですか?
確かこの映画は、入学した後、先生から紹介された記憶があります。
伊藤欄が失神するシーンは、ホントの心肺蘇生の場面だったのですね。
すごい。やっぱり大森監督の気迫を感じます。妙にリアルでしたもん。
先生はいろんな「軸」でこの作品を分析されていますね。
さすが、読みが深い。先生の思い入れには遠く及びません。
僕にとっても、不思議な愛着があります。いろんな意味で。
コメント、ありがとうございました!(^^)
ヒポクラテスたち
自主映画出身監督の草分けであり、医大生でもあった大森一樹監督が、自らの体験を反映させながら撮った青春グラフィティ。本作の成功は、当時自主映画活動を続ける者たちを大いに刺激するとともに、その後の彼らが映画界へ台頭していく上でのひとつの目標ともなった。
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