Stingについて二回にわたり、語ってみようと思う。
私が中学生の頃、イギリスで三人組のロックバンドThe Policeが大旋風を巻き起こしていた。私の記憶が確かならば、NHKの午後9時のニュースで、その社会現象にまでなったThe Policeの映像が流されていた。言うまでもなく「Roxanne」が一番インパクトあったな。その中心にいたのが、Stingその人である。この人に「魂の孤独」を語らせたら、右に出る人はいないと思う。デビュー作かつ出世作である「Outlandos d’ Amour」は、その「むき出しの孤独感」というべきものを、よく表現していると思う。ホント、ヒリヒリするほどむき出しです。当時平凡な中学生だった私には、そんな「きつい世界」のことはよく分からなかった。何らかの魅力を強く感じとったのは確かだが。そして、それから10年以上も後に、その「きつい世界」のことを知ることとなる。今回は次の三曲をピックアップしてみる。
まずは「Roxanne」
シンプルでどことなく空虚なイントロ。Andy Summersのギターがとても好き。そこにStingの「Ha ha ha…」という自嘲的な笑いがたまらない。歌詞の内容としてはRoxanneという女性の売春行為を「もう、そんなことしなくていいんだ、それは悪いことなんだ・・」と切々と訴える。Roxanneを愛してしまったのに、彼女のその汚れた行為を止めることができない、自分の無力さへの苛立ち。ひとことで表現するなら「やるせなさと自分への憤り」といったところか。
次に「So Lonely」
The Policeの初期の楽曲としては、これが一番直截的で好き。Stingの打ちのめされたような、しかし何かを訴えようとするボーカルが、とても印象的。彼が言いたいのは「俺、寂しいねん!(ToT)」このひとことである。それ以外何もない。「lonely」という単語が、数え切れないほど出てくる。でも、それゆえに聴く側にとっては、胸に突き刺さるような作品である。最後のStingのボーカルアドリブソロ?は圧巻だ。孤独の痛みをぶちまけている。これって計算していないよね? いや、やっぱりある程度の計算はあるのかな? いずれにせよ、こんな真に迫ったボーカルが出てくるところが、彼の偉大なところだと思う。ほんま、胸に突き刺さる。痛い。
次に「King Of Pain」
デビュー作から五年後に発表された作品。The PoliceあるいはStingは、この五年間で見違えるような成長を遂げている。成熟といった方がいいか。若さを象徴する荒っぽさが鳴りをひそめ、一種独特な世界を構築している。まるちょう流に表現すると、体の真ん中にある哀しい空洞に深く共鳴するような音楽。ほんと不思議な音楽だ。歌詞はとても難解。Stingって、哲学者の素質十分だと思う。
「あの世における自分の魂」に関するいくつかの描写・・太陽の黒点、背の高い木の上に引っかかった黒い帽子、ぼろ切れになった旗が風にとめどなく吹かれるetc。こうしたメタファーが延々と綴られる。これらは全て「痛み」のメタファーである。そして、「痛みの王様になることが、自分の運命なのだ」と語る。あらゆる「痛み」を背負って、あえてその中で滅んでいく種族。でもこれって、どこかの宗教の教祖さんがいう言葉だよね。確かにStingの心象風景の一部なんだろうけど・・ そこにはまだ、救いは認められないと感じる。でも曲調は比較的淡々としていて、悲愴感のようなものはない。その辺がデビュー作との違いかな?
Stingかぁ・・面白いアーティストやなぁ。Blog書いたら余計に興味が出てきた。自叙伝を見つけたので読んでみよう。後編は、近いうちにまた書きます♪