近況をひとつ。
4日の午前9時から翌日9時まで、24時間の当直業務だった。結論から言うと、めっちゃしんどかった。やっぱり、家族旅行明けの日当直は、アホみたいにしんどい。特に4日の業務開始の頃の体調自体があまりよくなかったので、不安だらけの24時間だった。38歳という年齢にとって、この不安定性は苛酷です。年始ということで、よい稼ぎになるとしても、健康の方が大事だ。来年からは、無理しないでおこうと思った。
24時間で、五件の入院があった。肺炎、ネフローゼ、自然気胸、狭心症などなど。中でも印象的だったのは、深夜3時頃に救急搬入された60代の男性。主訴が「顔が腫れて、口が開きにくい」というもの。バイタルに問題はないが、その異様な雰囲気に眠気も吹っ飛んだ。とりあえず、採血と頭部CTをオーダー。結果は「血液疾患の可能性大」であった。4時頃その結果を目の当たりにして、愕然とした。
入院を促すためには、ある程度の説明はしなければならない。本人さんと奥さん、娘さんがいらっしゃったが、ある程度率直に「血液疾患の可能性があり、入院の上精査が必要です」と伝えた。もちろん、患者サイドにも「あうんの呼吸」で、その重大性は伝わる。医師として、とても気を遣う場面だった。当たり前だけど、すごくピリピリした雰囲気で、正直言ってめちゃめちゃ疲れた。
その部分的な告知は、ある意味で患者さん本人と家族を地の底に突き落とすものだったと思う。その後、ついたて一枚隔てたPCの机に向かい、複雑な気持ちで入院のオーダーをしていた。すると、かなり経ってから「クスクス」という、とても穏やかな笑い声が漏れてくるのを耳にした。紛れもなく、三人が笑っていた。一瞬「え?」という感じで耳を疑う。沈痛な気持ちでいるはずの家族三人が、もう笑っている。私は、その一瞬で家族の絆の強さを思い知った。もちろん、詳細は分かるはずもないけど、その「クスクス」に、私は直感的に愛を感じたのだ。病棟へ上がるときに、私に向けられた奥さんの凛とした表情が忘れられない。家族三人で、深々とお辞儀をされたので、私も最敬礼で応じた。これから、厳しい闘いが始まる。なんとか頑張って欲しいと思った。
今思うと、このご家族から大いに力をもらった様な気がする。その後も救急車が来たり、結構大変だったけど、割と余裕を持って乗り切れたのは「力をいただいた」からではなかったかと真剣に思う。医療って、いつも一方通行では辛すぎる。こうして、患者さんから力をもらうことも、たまには必要だと思う。ちうか、その双方向性こそが、医療の醍醐味だし、理想だと思うんだけどね。
以上のように、今回はホントに疲れたけど、収穫も多かった。収入云々より、そういった「生きた臨床を学べる機会」としての日当直の意義って大きい。でもな~ やっぱり、そろそろ当直業務も撤退かな?という風にも感じている。無理が重なると、いつかミスに繋がるわけだし。まぁ、いろいろ複雑だけど、とりあえず今回の日当直は無事終わった。大きなミスがなかったことに感謝。また、日常の診療に戻っていきます♪