体調もやや悪く、いろんなことが重なり更新遅れました。「いろんなこと」というのは、良いことも含めて。ともかく、今回のBlogは「YouTubeを語る」で行きたいと思います。実はこのコーナーもネタが切れてきて、どうしようかと考え中なのですが、今回はひとつ「これは!」と思わせる映像に出逢ったので、書けるだけ書いてみる。
まずはいきさつから。前回Blogの「チルソクの夏」を、佐々部清監督に読んでいただこうと思い、公式HPの掲示板に書き込んだ。その時に、ついでに6月に「半落ち」でお世話になったときのことを思い出し、そちらに寄ってみた。すると、5ヶ月前に私宛に、ひとつの投稿があったのだ。どなたか存じないが、ぜひ佐々部監督の「出口のない海」で感想Blog書いてくれ、という内容のものだった。そしてひとつのPVがリンクで添えられていた。「返信」(竹内まりや作)という楽曲のPVである。そのうたは私もすでに知っていたのだが、その映像とともに聴くと、なんというか一種独特の「心の芯を揺さぶられる」感じを受けたのね。「出口のない海」の主題歌が、他でもないこの「返信」。というわけで今回はそのPVをネタに、ちょっと語ってみたいと思う。
この映像を観た翌日、いつまでも竹内まりやの、独特の心に染み入る歌声が頭の中でリフレインしていた。仕事中だというのに、何度も何度も頭の中で。それ以前にすでに聴いていたはずの楽曲なのに、この映像を観てから頭から離れなくなった。おかしな現象だ。
このPVで登場する女優さんは、上野樹里。申し訳ないけど、最初観た時は彼女と判らなかった。女優さんというのは、こうでなくちゃね。おそらく素の上野樹里とは、かなり乖離したイメージだと思う。でも、上野さんはとてもよい仕事をしている。
このPVの意味するところをいろいろ考えたんだけど、考えること自体、馬鹿みたいなのかもしれない。PVを作った人の意図としては、いかに観た人に「何らかの違和感、感情の揺れ」を起こさせるかだと思う。そういう意味では、この作品は大成功の部類だろう。再生回数とコメントの多さをみても分かる。人の心の奥底に潜む「何か」を、呼び覚ます力があると思う。
このPVのストーリーとしては・・
ある日、平凡な若い女性に一通の封筒が届く。中身は水族館の入場券。それは、日常から非日常への「招待状」だった。女性は閉館した水族館で幻想的な体験をする。そして解放されていく自分を感じ取る。非日常は夢幻の世界。自身も素敵なワンピースで身を包み、美しく振る舞う。そして水槽から魚が飛び出てきて、一緒に戯れる。本当に楽しい夢の世界。でも・・それは永続しない。次の刹那に、日常に戻る女性。夢の世界の名残を惜しみつつも、その瞳は「ありがとう」と呟いている。ひと夏の淡い経験。一枚の半券は風に吹かれて・・
こんなところだろうか。
それに対して「返信」の歌詞は「出口のない海」のストーリーに沿ったもので、こんな感じ。
大好きな ほほえみを 失った今でも
心が覚えてる 温かいあなたの手
残された 文字とともに
(中略)
読まれないこの手紙 それでも書かせて
永遠の愛をこめた 私からの返信
こうしてみると、PVのストーリーと実際の歌詞の内容は、同じものではない。でも、ただひとつリンクするものがある。言葉にするなら「生のはかなさ」じゃないかしら。微妙にすれ違いながら、しかしお互いに干渉し合い、溶け合って、素晴らしいケミストリーを起こしている。1+1=3というやつですね。
この目が離せないPVの謎を分析すると、以上のようなことになる。思うんだけど、魔法は解かないほうがお洒落なのかもしれないね。分析というのは私の癖みたいなもんなんだけど、種明かししないほうがマジックは楽しめるから。分析は、結局無粋である。こんなまとめ方で、すみません。以上「返信」PVをネタに語ってみました。
PVの演出意図について齟齬が有る様なので、一言申し上げたい。
①何故“上野樹里”を使ったのか
②何故“水族館”なのか
③何故“泡”になって消えるのか
①については主題歌で有る『出口のない海』で回転搭乗員で有る並木の恋人役だった事。つまり、遺書を受け取ったその後の恋人を彷彿させる意図が有るかと。
②についてはテーマが『海』だった事。又、手軽に陸との境界を越えられるのは何処かと言う事。入場券が送られて来るのは、海への誘いという意図も有ると思われる。
③については『人魚姫』がモチーフになっており、(恋人の魂の居る)海と同化したい思いを伝え様としたのではないか?とも取れる。
深読みすると、歌詞に込められた意図を抽象化したPVと言う気がするが如何だろうか。
> 一筆啓上さまへ
このPVを観てどう感じるかは、各個人の自由であり、どれが正しいとう言われはありません。一筆啓上さんのお感じになられたことは、それはそれでいいんじゃないでしょうか。それと同様に、私の感じた印象についても、どうか正当に評価していただきたいですね。このPVを作った方の意図は、結局のところ、その人以外は分からないのです。
その「自由さ」を尊重した上で、ちょっと反論いいですか? 「出口のない海」における「海」の意味するところとは「前途ある若者が何の意味もない死に向かう場所」だと思うんですね。②の「海への誘い」とありますが、主人公が無残にも意味もなく死んだ「海」へ、恋人を誘うわけですか? それはあり得ないですよ。真に愛している男性ならば「俺のことは放っておいて、新しい人生を歩んでくれ」となるはずじゃないですか?
③も同様です。そのようなネガティブな意味のある「海」に同化したいと思うでしょうか? タイトルにもありますが「出口がない」んですよ? PVは、ちゃんと出口があります。おとぎ話から、ちゃんと帰って来れます。泡になって消えるということは、夢が醒めるということです。主人公が死んだ海に同化したら、戻ってくることはできません。
ちょっと熱くなりました。すみません。Blogの中の「微妙にすれ違いながら、しかしお互いに干渉し合い、溶け合って、素晴らしいケミストリーを起こしている」という言葉を、いま一度吟味いただけると幸いです。